演劇よ、さらば

 若いころあんなに好きだった演劇だが、もうこのところ、芝居を観に行くと地獄のような目に遭う。蒼井優に目がくらんでつい買ってしまった「サド侯爵夫人」だが、実はその日が近づくにつれて嫌な予感でいっぱい。だいたい世田谷区は禁煙ファシズム北朝鮮みたいなところで、世田谷パブリックシアターは恐ろしいところだからである。外へ追い出すだけではなく、なんかえらい遠くに喫煙所があって、十分の休憩ではめしも食えないしどういうつもりなんだか。
 しかも、白石加代子がもう三十年同じ調子で演技しているし、麻実れいもいつもの通り、つまり「サド」と知って白石が出ると聞いただけで、予想通りの舞台にしかならないのである。それで、一幕だけ観て帰ってきたが、以前は喫煙場所になっていたところで嫌がらせに喫ってきた。それでも絶望感がひどくて、一つは禁煙ファシズムへのそれ、もう一つは演劇へのそれである。80年代から、何も変わっていないというこの現実。だいたいあんな劇場で芝居をするってのが演劇人としてダメだと思う。ブレヒトの「喫煙劇場」とか知らないのかこの阿呆、という気がした。
 もう生涯世田谷へ行くことはないだろう。

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鈴木貞美曽根博義を批判した論文を見ていた。これは鈴木のほうが正しい。しかし18世紀英国の作家として「トニー・リチャードソン」と書いているがこれはサミュエル・リチャードソンのことだろう。トニー・リチャードソンって映画監督だろう。

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アメリカから取り寄せた連続ドラマ『ジョン・アダムス』が素晴らしい。二代大統領を主役にしてアメリカ独立革命を描いたものだが、今までなかったものだ。大学でアメリカ史やアメリカ文学を教える人は、ぜひ学生に見せてほしいと思った。日本でも字幕をつけて出せばいいのに。

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