2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

敵は濤川栄太

管賀得留郎こと宮下整の『戦前の少年犯罪』で、戦後教育のために少年の凶悪犯罪が増えた、と言っている「敵」が誰か書いていないと論難したが、先日濤川栄太が死んだので調べていたら、『これでいいのか! 日本の教育 残虐化する少年犯罪』という竹村健一と…

本格小説?

水村美苗ではない。香山リカである。『精神科医ミツルの妄想気分』というのが出るので、ああ久しぶりの小説だなあと思ってアマゾンで見たら「著者初の本格小説」とある。じゃあ『えんじぇる』は本格小説ではなかったのか。手すさび小説だったのか。 - 書店で…

増田明美の逆転人生

『週刊新潮』に、Qちゃんの解説者デビューがあまりうまくいかなかったという記事があり、増田明美の解説技術がずば抜けている、とあった。ああ、逆転人生だなあと思ったものだ。 私は二人とも好きである。しかし増田明美は、辛酸を嘗めたもので、勝てなくな…

杉山武子の不満

しんのすけ君がこんな本を紹介している。 http://d.hatena.ne.jp/zoe1/20090427 杉山武子(1949− )はこれ一冊しか著書はないが、初版は『夢とうつせみ−一葉樋口夏子の肖像』(1999)で、これはそれの改題新版である。http://www5a.biglobe.ne.jp/~takeko/ …

論文はしばしば不要に長い

http://skumbro.cocolog-nifty.com/edo/2007/06/post_03bc.html 猫猫塾で「たけくらべ」をやっているので、こんなところに行き着いた。それで「初検査説」の上杉省和(よしかず)の論文を見返していて、不要に長いことにうんざりした。 理系ではそうでもない…

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新刊です。『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/04/01メディア: 新書購入: 20人 クリック: 569回この商品を含むブログ (35件) を見る なお以前、著書は原則として年に三冊、としていま…

「国際グラフ」からの電話

電話番号は大阪であった。男は、国際企画の「国際グラフ」という雑誌の者と名乗り、猫猫塾の塾長さんですかと言う。うちの雑誌で紹介したい、と言う。 「まあこういう、文学の塾というのは珍しいと思いまして」 「そうですか?」 検索すると、すぐに「あとで…

メリー・ポピンズは少女か?

藤本君、訴状の送達が遅れてすまない。見ての通り三月始めには提出していたのだが、訂正があったり、裁判所で人事異動があったりして、こんなに遅れてしまった。 ところで君が書いたものを点検していて、どうやら君がメリー・ポピンズというのを少女だと思い…

『声の網』

枡野浩一さんに勧められた星新一の『声の網』を読んだ。短編連作などと書いてあるが、これは長編だろう。コンピューターが意志を持って人々を支配するという話で、最後に、それが神だというようなおちがついている。 つまらないとは言わないが、面白くはない…

篠沢教授

篠沢秀夫の『篠沢フランス文学講義』の第五巻を必要あって見た。これは講義録で、録音でもしたのか、おもしろい。ナタリー・サロート(1900-99)をとりあげた、1998年の講義。 ナタリー・サロートは生きているようだ。去年も本を出しているので、生きている…

SFについて

J・G・バラードが死んだ。このSF作家は浅田彰も褒めていて『ユリイカ』でも特集されたが、私は代表作らしい『沈んだ世界』を途中まで読んで放り出した。その他プリースト『逆転世界』なんてのも、すごい傑作だと書いている人がいたので、我慢して通読し…

栗原裕一郎、推理作家協会賞を受賞

『<盗作>の文学史』が評論その他部門で日本推理作家協会賞を受賞。これって本人にはいつ知らされるんだろう。あ、これ版元が決まるまであちこちで断られているから、ちょっと「ざまあみろ」である。〈盗作〉の文学史作者: 栗原裕一郎出版社/メーカー: 新曜…

イヴ・コゾフスキー・セジウィック死去

http://urag.exblog.jp/8180987/ そういえばセジウィックの乳がんはもう十年越しのもので、それでDialogue on Love を書いて、それも持っていたのだった。 - 江藤淳の対談集『もう一つの戦後史』で東久邇稔彦が「『東久邇日記』は、私が書いたんじゃないんで…

スペクトルマン

支配と服従の倫理学作者: 羽入辰郎出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2009/03/01メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 143回この商品を含むブログ (9件) を見る 羽入辰郎の新刊『支配と服従の倫理学』を買う。前半は、アイヒマンとかヒトラーとかの議…

「非漢字圏」って・・・

イラン人の女が文學界新人賞を受賞したとかで、「ああまた外国人の女か、それで芥川賞か」の「ああまたか」感が激しく否めないのだけれど、某ニュースでは「非漢字圏から初」とかあって、リービ英雄もデビッド・ゾペティもいるのに、ただ文學界新人賞という…

新刊です

東大駒場学派物語作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 新書館発売日: 2009/03/25メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 181回この商品を含むブログ (21件) を見る「東大駒場学派の歴史」としてここに連載しておいたものに大幅加筆したものです。〔訂正〕 18p「…

http://uicp.blog123.fc2.com/blog-date-200811.html 宇波彰先生のブログがあるとは知らなんだ。 私は宇波先生とは一度だけ会ったことがあって、その後も著書を送ったことがあるはず。ただ、ここで出てくる「平川祐弘の弟子」はたぶん私ではないと思うのだが…

大本営・大政翼賛会的マスコミが「喫い逃げ続出」などと報道しているが、路上喫煙の課金なんて憲法違反なんだから、払う必要はない。 悔しかったら俺をつかまえてみろ。名刺を渡すから、取立ての裁判でも起こしてみるがいい。まあもっともこのニュースは、憲…

生きながら祟る

http://www.chikuyusha.jp/ITiinndayori/0903/dai3kai.html 今ごろになってこんなことを言っている人がいる。困ったものだ。網野説はインチキ。それに滝川政次郎の説も誤解されたままだし(滝川は「遊女」というのを売春婦の中の特定の集団と見て渡来民説を…

自作自評

『フリースタイル』という雑誌で私の著作が二冊とりあげられている、と栗原さんのブログで知って、近所の本屋で探したのですが見つからず、栗原さんに送ってもらいました。 『里見弓享伝』を取り上げてくれたのは窪木淳子さんで、最後に「小谷野さんの鉄砲玉…

天川由記子さん

高木ブーが再婚するとかいうニュースを見ても、ふーんという感じで興味を持たなかったのだが、その相手が、帝京大学准教授・天川由記子さん(50)と知って驚いた。 私がカナダへ行く前の89−90年、英会話の勉強のため観ていたNHK教育の英会話番組で講師を…

「お前だ」とカピバラは言った

仄聞、ヨコタ村上が週刊新潮を訴えたらしい。しかしその内容は「強姦ではなく和姦だ」というもの。あの記事を見たって「A子さんは強姦されたと言っている」とは書いてあるが、「つきあっていた」というYMの証言も書いてあり、問題ないと思う。A子さんを…

高村勝治が死んだ。この人の名前は「悲望」にも出てくるが、何より、蟻二郎が論文の掲載拒否をされた時に、柄谷行人らと高村の軽井沢の別荘まで抗議に行ったという話がある。40年近く前の話で、実に長生きしたものである。

私小説の定義

『週刊読書人』を立ち読みしたら、栗原さんの文藝時評で西村賢太をとりあげて、こういう自己戯画化小説を私小説と呼ぶのはどうか、みたいなことが書いてあった。 私小説という語は、このように定義なく恣意的に使われてきたわけで、漱石の『道草』など普通に…

二人の竹田出雲

「竹田出雲」は、少なくとも二人いる。初代と二代目である。初代は『菅原伝授手習鑑』の作者筆頭、二代目は『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』の作者筆頭である。ただ、実際に作者の中核にいたのは、並木千柳(のち宗輔)、三好松洛である。 以前、橋本治が『…

古書払底説

インターネットで古書が買えるようになったのは画期的だった。それまでは、古書店で現物を見つけるとか、せいぜいカタログで探して注文するだけだったのが、たちまち検索できるようになったのだから、私など、よほど入手困難なものや高価なものでない限り、…

査読を信用しない

http://sociology.jugem.jp/?eid=277 確かに社会学にはそういう傾向があるのかもしれないが、少なくとも私は査読者って信用していないんだよね。 たとえば私のこの論文は、結果として明治大学の紀要に載せたんだが、 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/2005…