「物語論」に飽きる

千野帽子の、物語がどうとかいう新書を読んでいて、途中でつまらなくなって投げ出した。別に千野が悪いのではなく、私は物語論というのはダメなのだ。

 もちろん比較文学者だから、ウェイン・ブースとかジェラール・ジュネットとかノースロップ・フライとかプロップとか一通りは読んでいるし分かっているが、結局それで終わり、あとは単に個別の技術があるだけで、それ以上のものは出てこないと思っていて、物語論というのはそれを単に変奏しているだけか、自分の世界観を語っているか、新奇な哲学でも開陳しているかに過ぎないからである。まあ、物語論なんかやるより、小説でも書いてくれ、という気持ちもないではない。

小谷野敦