伊藤氏貴「同性愛文学の系譜」アマゾンレビュー

2020年6月26日に日本でレビュー済み

 
著者は、日本には男色や衆道という「同性愛」があったと言っているが、徳川期以前の衆道は「少年愛」であり、大人の男が前髪の少年をめでるという非対称なものであった。たとえば佐伯順子は正しくそう指摘している(『男色大鑑』角川文庫解説)。著者がその見解に反対だというなら、そういう立場をとる論者に対して反論をしなければならない。でないとただの間違った前提の上に立った紹介文にしかならない。また妙なことに本書には引用文献一覧があるが参考文献一覧がないのだがどういうわけで先行研究を無視しようとするのだろうか。