2010-01-01から1年間の記事一覧

中川右介『坂東玉三郎』

この本をようやく通読した。『団十郎と歌右衛門』の時から、中川氏は、老いて醜くなってなお歌舞伎界に君臨した歌右衛門を批判し続けており、ここでも歌右衛門は、歌舞伎座立女形の座を守り、玉三郎を歌舞伎座から排斥した(らしい)敵役を演じさせられてい…

「上から目線」って何?

まあどうせネット用語などというのは、各人ばらばらの定義で使っているのだろうが、「上から目線」というのをこないだ言われて、まるで意味が分からなかった。そいつは、私が「××」を読め、と言って、それで相手が読むと思うのが上から目線だと言うのである…

談志師匠の直言

なんか検索すると私の書いたのばかり出てくるので、原文を掲げておく。『en-taxi』9号(2005年3月)談志師匠、福田和也、談春の鼎談である。 家元 だけど野田秀樹の「研辰の討たれ」は、おもしろくなかったなあ。あれは仇討ちの話でしょう。勘九郎主演だから…

萩原孝雄氏との対話

もう二週間くらい前から、米国ケース・ウェスタン・リザーヴ大学教授萩原孝雄氏とメールをしている。萩原氏は鶴田欣也先生の教え子であるが、このままでは日本はシナの属国になる、と言っている。私は、シナ、北朝鮮の現状では、日本の核武装もやむなしと思…

ヨーク軍曹

先日、西洋では良心的徴兵忌避者は英雄扱いされるのに、日本では非国民扱いされる、などと言っていた者があったので、そんなヴェトナム戦争以後のことと第二次大戦当時のことをまぜこぜにしてはいかんと言ったら「ヨーク軍曹は」と言う別の人があったので、…

私の著作に触れて「純文学の必要十分条件とは何か」と書かれたブログがあった。ちょっと面白いと思って考えたのだが、十分条件は「私小説」であることである。しかし、必要条件は難しい。純文学でないことの必要条件なら、あるような気がするのだが、難しい…

ベルリン忠臣蔵

原題をDer Sommers des Samurai という、ハンス・ブルーメンベルク監督の1987年の作を観たのだが、まあ例によって勘違い日本文化映画なのだが、今ひとつ笑いどころが足りなかった。現代ドイツのハンブルクで連続強盗事件が起きて、現場には「近松」「赤埴」…

福田和也といえば、90年代に、確か四谷ラウンドから出ていた座談会本で、「いやむしろ、ギングリッチのようななんたらのほうがかんたらうんたら」と言っているのを立ち読みして、へえ米国政界の内幕にまで通じているんだ、すごいなあ、と思ったものだが、米…

批判のための批判?

田中貴子が朝日新聞で、表章の梅原猛に反論した遺著を書評して「批判のための批判ではなく」と書いているが、これは言葉の間違いで「単なる批判をこえて」とでもすべきだろう。批判というのは批判のためにするもので、まあこういう言葉づかいに、田中貴子が…

「現代文学論争」補遺

「現代文学論争」のために書いたのだが、分量の関係で割愛したものである。未完。 福田和也という謎 福田和也(一九六〇− )は、江藤淳、柄谷行人の衣鉢を継ぐ文藝評論家とされ、慶応義塾大学環境情報学部教授である。これまでいくつかの論争を行ってきたが…

「調子をやる」

「調子をやる」という言葉の意味を初めて知った。声をつぶすという意味である。落語で、主人公が家へ帰るとおかみさんが声をつぶしていて「調子やってんだよ」というのを聞いていたが、何か稽古ごとかと思っていた。 それはともかく、私は、風邪を引いても、…

「南部坂雪の別れ」の謎

「南部坂雪の別れ」は、忠臣蔵の一コマだが、桃中軒雲右衛門の作とされている。討ち入りの前日大石内蔵助が瑤泉院を訪ねるが、侍女の中に吉良の間者がいるのを見破り、討ち入りのことは言わず、旅日記だといって血判状の巻物を仏壇に供えて去る。するとその…

会社の名前が長くなる

一時期、銀行の合併で、太陽神戸三井銀行とか、長い名前の銀行ができた。だいたい整理されたが、三菱東京UFJだけは長いまんま。こういうのは統合で長くなった例だが、近ごろは子会社を作ったり改名したりして長くなる出版社が多くて、何か不快感がある。…

阿刀田高の役どころ

「アラビアンナイトは本当に面白いのか」というので、阿刀田高の『アラビアンナイトを楽しむために』を読んだら、やっぱり阿刀田も途中で、ギリシャ神話ほどに洗練されていないし面白くない、というようなことを言っていた。まあ、こういうのが阿刀田の役ど…

新刊です

現代文学論争 (筑摩選書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/10/15メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 165回この商品を含むブログ (25件) を見る なんか久しぶりの新刊のような気がする。 内容は、フォニイ論争、江藤淳の論争、筒井康隆…

金閣寺の謎

酒井順子さんから『金閣寺の燃やし方』を送ってきた。どうやら三島由紀夫割腹四十年とかで、書店にも三島関係の書籍が多くて気持ち悪い。私は三島が嫌いなのである。よく混同されるが、好きか嫌いかというのは、学問的に正しいかどうか、文学として優れてい…

『乙女の誤読』の密告、あ、逆だ

最近はサッカーの話が多くてつまらないと書いたら、金井美恵子先生に祈りが通じたのか、今月の『一冊の本』の金井先生は面白い。例の芥川賞受賞作を、生理用品の呼び名に関連づけて金井節であげつらってくれたあと、宮本輝が選評で「アンネを密告したのはア…

もうしばらく、演劇というものに行っていない。禁煙措置が不快だからである。しかし、「将軍江戸を去る」を観たことがなかったので国立劇場へ行って、やはり激怒した。 国立へ行ったのは五年前で、その時は喫煙者は外へ追い出されて、劇場前の床几で吸ってい…

アラビアンナイトは面白いのか

『アラビアン・ナイト』ないし『千一夜物語』だが、シンドバッドとかアリババとかいうのは、これの傍系物語らしい。鳥越信は、子供の頃シンドバッドやアリババを読んだが、大人になって本物を読んだら、それ以外のほうがずっと面白かったと書いている。 しか…

女王殿下

http://ci.nii.ac.jp/els/110003881983.pdf?id=ART0005209860&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1287838452&cp= この人に比べたら私なんかおとなしい方だと思った。http://www.meijijingu.or.jp/news/taisai/2010/kokusaishinp…

私は『悲劇喜劇』という雑誌の1972年のさる記事を入手しようとした。ところが、国会図書館では「作業中」つまりデジタル化中で使えない。そこで地元の図書館に他館からの借り出しをリクエストした。ところが、到着してみると、館内閲覧のみ、コピーはしては…

私小説よ・・・

最近の川端康成文学賞受賞作をまとめて読んで、やや溜息なり。いわゆる、身辺雑記私小説が二つほどあった。川端賞はかねてその傾向があるのだが、結局こういうものを読んで、私小説ダメ説を抱く人がいるから困るので、私は身辺雑記私小説がいいとは言ってい…

コーテン機

大学院一年の頃、アテネ・フランセへフランス語の勉強に通っていた。福井芳男(東大教授)の講読の授業だったのだが、おかしなことがいろいろあった。「雑木林」を福井先生が読めなくなって、えーと何だっけ、ざっきりんじゃなくて、と言っていて、私が「ぞ…

伏見憲明のことか!

<文芸賞>受賞を取り消し 毎日新聞 10月15日(金) 公募の新人文学賞「文芸賞」(河出書房新社主催)の今期の受賞決定作が、モチーフの重要な部分をインターネット上の記述に依拠していたとして、受賞を取り消されていたことが分かった。 受賞作は「該当作な…

国会図書館のデジタル化作業のおかげで仕事に支障が出ている。ああこの資料だ、と思って辿って行くと「作業中」と出る。修士論文とか書いている人はえらい迷惑しているのではないか。

憂鬱な話

やっと連休とやらいうものが明けた。物書きにとって連休はつらい。今回も、取材の電話があって「11日でもいいですか」と言ったらいいと言うので、9日に「では11日に」とメールしたら返事がない。当日になってもない。 さて書店めぐりをしたら、『サンデー毎…

小室直樹について

先日、小室直樹に学問的業績があるのかと書いたが、ありました。 http://www.interq.or.jp/sun/atsun/komuro/list1958-1979.html しかしそれだけあっても大学に就職できなかったのか……。 - 「ブ」へ本を売りに行ったら対応の男店員、計算に十分ほどかかりま…

忘却とは忘れ去ることなり

『帰ってきたウルトラマン』の廉価版DVDが出たので、まだ持っていなかった最終巻を買って最終回を観た。初めに観た時も変だと思ったような記憶があるのだが、ゼットンは初代ウルトラマンを倒したあと、科学特捜隊のペンシル爆弾(なんて安易な名称だ)で倒さ…

『文藝春秋』11月号の「小悪魔女優アンケート」で私が「秋桜子が全裸なので」と書いているが、これは「主演なので」の間違い。このアンケートは送られてきた用紙に手書きしてファックスしたもので、以後ゲラとか確認とかないのである。

いい度胸だ

(活字化のため削除) - 昼間駅前の書店にいたら、レジにいる、60代くらいの女性と、店長らしい70くらいの男が、値上げ以来タバコを吸っていないという話をしていた。男は、買いだめもしてないし、値上げ以来買ってもいないからと言い、女も、吸ってないと言…