阿刀田高の役どころ

 「アラビアンナイトは本当に面白いのか」というので、阿刀田高の『アラビアンナイトを楽しむために』を読んだら、やっぱり阿刀田も途中で、ギリシャ神話ほどに洗練されていないし面白くない、というようなことを言っていた。まあ、こういうのが阿刀田の役どころだろう。
 というわけで「東京新聞」を図書館で観ていたら阿刀田がエッセイを書いていて、浜田山に住んでいるとあったが、本当は東高井戸である。それで散歩をすると、この辺は新潟出身の人が多いんではないかと思える。屋号とか、そんな感じだと書いてあって、私はそんなことは感じなかったのだが、「燃いるごみ」と書いてあるのを見つけて、「え」と「い」が区別できないのは新潟の人の特徴だからこれは新潟県人が書いたのだな、とあるのだが、それは違う。茨城もそうであって、恐らく茨城、福島、栃木から新潟あたりがそうなのだろう。うちの母も「江藤淳」をいつも「いとうじゅんさん」と言っていた。『獅子の時代』を観ていて、「大井憲太郎」という名が出た時に、大江健三郎みたいだと言ったのも、そのせいだろう。母方の祖母は「りい」といったが、こう書いて「りえ」と読むのである。 

                                                                    • -

1957年の映画「大忠臣蔵」を観た。「仮名手本忠臣蔵」をベースに、名前などを史実に置き換えた一種の珍作だが面白い。内蔵助が市川猿之助2代、主税が当時団子といった今の猿之助18歳で、すごくかわいい。
 珍なのは、加古川本蔵、早野勘平、斧九太夫、定九郎、桃井などは浄瑠璃の名前になっていて、寺坂吉右衛門浄瑠璃と史実をまぜこぜにした寺坂平右衛門という名になっている。それはいいのだが、陪臣である本蔵が江戸城中にいるというおかしなことになっている。しかしお軽、鏡に写して手紙を読むってリアリズムでやると意味不明だ。