私は確か2003年だったが、小浜逸郎に依頼されて、麻布高校で「人間学アカデミー」という三回の講義をした。その時、知らされていなかった小浜とか佐藤幹夫とか運営者側の人間がどやどやと最初から教室に入ってきて、不安感を抱いたのは前に書いた。しかも小浜は私が言うことに異議申し立てまでしたのである。
あと当時私は最初の妻と別れたあとで、「最初の結婚をしていた時は妻の影響もあって売春撲滅論者だったんだが、今では必要悪だと考えている」と言ったのだが、そのあと小浜がなぜかまとめに来て、「今小谷野さんがこういうことを言いましたが、結婚している相手の影響を受けるというのは、決して恥じるべきことではないと思います」とか言ったのだが、それを聞いて私はまた腹が立った。そもそも私自身恥ずべきことでも何でもない、自然なことだと思っていたからだ。小浜が生きている間にそれを言えなかったのは残念だ。
（小谷野敦）
