呉智英は、『週刊ポスト』の連載で、小保方晴子をスパイとして活用したらいいのにという戯文を書いていた。『あの日』が出たあとだったから、読んでないのかなと思い、ハガキを出して「小保方はスケープゴートにされたのです」と書いておいた。
その後で絶縁したのか、2018年にポストの連載が新書になった時、見たら、小保方についての文章はそのままで、付記がついていて、なお彼女の味方をする者がいる、とあったから、この人はミソジニストだなあ、と思ったことであった。
九大の教授だった中国文学の日下翠という人がいて、手紙のやりとりをして自著も送ったことがあったが、それが別の人が本を送ってきた封筒の再利用だったから、あれじゃもてないわよ、と日下が言っていたということを呉智英が「マンガ狂につける薬」に書いていたのだが、誰とは書いていなかったから電話をかけて聞き出した。
呉によると、日下はマンガ学会に出てくるのだが、日下が発言すると皆が脇を向いたりして白けてしまうという。それで呉は日下に「日下さーん」と声をかける、というようなことを言っていて、女にやさしい人なんだなと思っていた。日下はその後死去した。
だがあとで考えると、あれは小林よしのりも時々やる「保護者的フェミニズム」で、女を弱者として保護しているのである。マッチョ的なのである。だから小保方のようにあくまで自分の立場を言明すると、ミソジニーが発動されるのである。
(小谷野敦)