野狐忌

 西村賢太の『田中英光私研究』第八輯は、田中の研究家でもあり西村が世話になった宇留野元一の追悼号なのだが、その最後に「野狐忌」という、もしかしたら西村の最初の私小説かもしれないものが載っている。ここでは「北町貫吉」という名前になっていて、これは「坂本英洸」という、師匠の「伊達修」の墓前で自殺した作家を研究している。太宰治まで仮名にしなくてもよかりそうなものだが、そこで、金井雄造という詩人、作家が出てくるが、これは桜井増雄である。
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 貫吉が知り合いの古書店主から、田中英光を知る人物として紹介されるのだが、どうやら『新生日本文学』に寄稿していた田中なんとかいう別人と混同していたらしい、という話である。