私はどうも松任谷由実が嫌いである。「瞳を閉じて」は、中学生のころ「みんなのうた」で流れて、歌っていたのはユーミンではなかったから好きだが、ほかの歌はちっとも感心しない。といっても、はやっていたころから全然聴いていなかったので、その後ぼちぼち耳に入っただけの感触である。「恋人がサンタクロース」なんて、なんちゅうアホな歌かと思う。
中島みゆきは好きである。あざとくなってからも好きである。いわばユーミンが村上春樹なら、中島みゆきは大江健三郎という感じである。
私は紅白歌合戦は見ないはずなのだが、2011年のそれは、ふと観てしまった。するとユーミンが、実家が呉服屋だとかで和服姿で出てきて「春よ、来い」を歌ったのだが、ほとんどテレビ画面の前で唖然とするくらい出来が悪かった。週刊誌では、楽屋へ帰って号泣したと書かれていた。
その時の映像がユーチューブにないかと思って探したが、削除されたらしく、ない。ウィキペディアの「松任谷由実」の項を見ると、この事件は書かれていない。紅白で「春よ、来い」を披露したとあるあと、翌年も出るかと訊かれて、ないと答えた、とあるのみで、いかにもその間が省略されているように見える。そこで編集履歴を見てみると、出場前に「紅白で披露する予定」とある。予定まで書かなくてよろしい。ところが紅白が終わっても、時にはやたらすばやいウィキペディアンが、ここを編集しない。ようやく二月になって、「披露した。その後…」がつけ加えられたのである。ユーミンのファンが、あのド下手な歌に呆然自失していたのかと思うと、愉快である。