2013-01-01から1年間の記事一覧

「さよならドビュッシー」の映画を観ていたらこれを思い出した。「スチュワーデス物語」(それにしてもこれのウィキペディア項目で「客室乗務員」として「当時はスチュワーデスと呼ばれた」と注がついているのは実に不快だ。言葉を管理するな)の系列のお笑…

図書館の本からの窃盗

山本文緒の新刊小説『なぎさ』は、確か「なぎさカフェ」の題で連載されていたような気がする。枡野さんが絶賛していたので読んでみたが、妻が漫画家というあたりに枡野さんは反応した、ということもあろうかと思う。 だが、どうも違和感がある。現代の話らし…

ドナルド・キーンの勘違い?

こないだ「東京新聞」の一面にドナルド・キーンが出ていて、『源氏物語』のウェイリー訳の話をしていたんだが、ウェイリー訳のほうが谷崎の現代語訳よりいいと書いて谷崎に謝り、谷崎が気にしていないと言ったとある。しかし、英訳と現代語訳を比較するのも…

日本史ブーム

月々の新刊書を見ていると、日本史の本は、一般向けでよく出る。講談社選書メチエとか、山川出版社とかで、それに対して文学のほうは全然ダメというに近い。 学者ではない一般読者の世界に、日本史について細かな議論のできる層というのがあるようなのだが、…

『批評空間』の共同討議で浅田彰あたりがよく「くだらない(あるいは、つまらない)話だけど」と前置きして語っていたのは、難しくて(ないしはインチキで)よく分からない本筋とは別の、ゴシップ的な話題だったように思う。まあたとえば、中上健次が埴谷雄…

朔太郎を読む榊先生

『比較文學研究』の98号が届いた。あと二号で百号ということだ。年二回刊行のはずが、最近年一回になっている。今回は萩原朔太郎特集で、これは編集責任者が、エリス俊子さんだから。エリスさんは、岸田俊子といった昔、修士論文を『萩原朔太郎 詩的イメージ…

ヤリタミサコさんの朗読

シリカ電球という、昔ながらの電球が、経済産業省の省エネ通達で生産中止になったという。最後まで製造していたパナソニックも、生産中止を半年早めることにしたという。 ところが、うちの廊下の天井灯には、新しい形の電球が入らないのである。古い電球では…

裏声で褒めろ文藝時評

(活字化のため削除) - 虎岩正純の『イギリスの中から 異文化としての英国発見』(研究社、1983)は、著者の英国滞在記だが、あとがきで、帰国して、高名な英文学者に、英国でいきなりクリスチャン・ネームを訊かれて驚いた、と話したら、老教授はあわれむ…

昨日、図書館で「東京新聞」を見たら一面にドナルド・キーンが出ていて、『源氏物語』の翻訳の話をしていた。アーサー・ウェイリーの英訳がすばらしいと言い、谷崎の現代語訳よりいいと『文藝』の座談会で発言して、谷崎に謝りの手紙を出したら、谷崎から、…

丹羽文雄

丹羽文雄の『山肌』という長篇小説がある。新潮文庫で二冊、元本も上下巻で1980年刊行、1978年12月から80年1月まで日経新聞に連載された。三沢苑子という生命保険で働くキャリアウーマンがヒロインで、四十代から五十歳近くまでを描いているらしい。夫と三人…

『大菩薩峠』もそうだが、私が面白くない小説や映画について、面白いという人に説明してもらいたいという気が、いつもしている。もちろん、いかに面白いかを書いた本というのはあるのだが、これは一方通行なので、対話形式で聞きたいのである。 ただ、自分は…

新刊です

あの、題名は編集者がつけたものです。面白いほど詰め込める勉強法 究極の文系脳をつくる (幻冬舎新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/09/28メディア: 新書この商品を含むブログ (12件) を見る訂正 p6「林真理子の『文章読本』は単行本…

ムルハーン千栄子先生に訊きたいことがあって電話したのだが、結局訊きたいことについてはご存じなく、だが一時間半くらいしゃべった。まあムルハーン先生がしゃべるのに懸命についていった感じだが、80歳を超えていよいよエネルギッシュである。 『八犬伝』…

1995年4月16日の読売新聞の連載記事[戦後50年にっぽんの軌跡](62)作家の死 太宰・三島・川端」に、「谷崎潤一郎、若き安部公房、大江健三郎もさかんに書き、社会への影響力、売れ行きともに頂点をきわめようとしていた七〇年代初頭。「それは日本に…

昭森社の謎

昭森社 1935年森谷均が創設。森谷均(1897年6月2日−1969年3月29日)は岡山県出身。中央大学商学部卒。1934年斎藤昌三の書物展望社に入り、35年東京京橋で昭森社を創業。詩集、美術書など良書を出版。戦後神田神保町に移り、46−49年総合雑誌『思潮』、61−87年…

誰もが絶賛は気持ち悪い。

『石原慎太郎を読んでみた』はもちろん栗原さんから恵贈された。朝日新聞に佐々木敦の書評も出て、アマゾンでも読書メーターでも、絶賛されている。これはまずい。「批判禁止」の雰囲気がある小説、ということを田中弥生が『文學界』の「新人小説月評」で書…

私が「私小説派」になった原因の一つに、若いころあまりに私小説はダメなものだと思い込み続けていた反動というのもある。ほかにも、まったくフィクションだと思って読んでいたものが、あとになって、けっこう事実なのだと分かったため、というのもある。『…

山川方夫と『洋酒天国』

作家・山川方夫(1930-65)は、江藤淳(1932-99)の親友だった。いずれも慶應出身で、山川は大学院に進んで小説を書き、『三田文学』の編集長をしており、江藤にも何か書くよう言った。江藤は漱石を書こうかと思ったが、英文学のほうにしようかと迷った。山…

江藤淳はNHKの解説委員だったしNHKにはよく出ていた。『明治の群像』は脚本も書いたし、80年代からは「テレビコラム」や「視点・論点」のレギュラーだった。しかし江藤以後、文藝評論家などがテレビに出ることは少なくなった。福田和也などNHKに出たことはな…

澁澤龍彦と小島信夫

『澁澤龍彦全集』別巻2に「大江健三郎の文学」という座談会が入っている。1959年だから、まだ大江が『われらの時代』を出す前で、出席者は江藤淳、篠田一士、澁澤なのだが、これがかなりひどい。澁澤が、嫉妬もあるのか大江を散々に貶している。江藤が一番大…

三四郎の身長

板坂元の『日本語横丁』を見ていたら、『三四郎』から、「三四郎は背の高い男である」として、美禰子を見下ろしたというのと、広田先生は身長が五尺六寸あるが、三四郎は五尺四寸五分しかない、とあるのを比べて、それでは背が高いとは言えないだろう、と書…

もう八年くらい前になるだろうか、私が、自分で料理が作れないと書いたら、ネット上で、「もう家庭料理などというのは崩壊しているのだ。男も自分で料理くらい作れ」と叱咤してきた者がいた。 岩村暢子の『<現代家族>の誕生 幻想系家族論の死』は、のち改…

『日本の有名一族』155pの江藤淳の系図にとんでもない間違いがあった。義母・日能千恵子が1940年生となっているがこれは妹・初子の生年で、弟・輝夫が1944年生。マリオ・メルカンテと結婚したのも初子。関係者にお詫び申し上げ訂正する。 - 伝記好きが嵩じ…

(活字化のため削除) - http://www.caritas.ac.jp/france/nobuko_inaba.php 「最終学歴(学位) カリタス学園同窓生、早稲田大学大学院博士課程満期退学(文学修士 ) 」 「カリタス学園同窓生」ってそれは学歴ではないのでは。カリタスは短大なので、そこ…

「青春放課後」でちょっと歌詞への言及があったのだが、私の大好きな歌である。藍川由美さんが「国民歌謡」で歌っているのがいい。「NHK 國民歌謡?われらのうた?國民合唱」を歌うアーティスト: 藍川由美,斉藤京子出版社/メーカー: 日本コロムビア発売日: 200…

映画版『妖怪人間ベム』を観たらけっこう良かった。私はアニメのほうはリアルタイムで観ていたはずだが、あれは結末が悲しかった。ドーナツ盤のレコードも当時買ったのだが、裏がおきまりのベロの歌で、大人は、あんな子供とつきあっちゃだめ、と言うのだが…

老人のエロス

小池真理子の『沈黙のひと』(吉川英治文学賞)は、死んだ父親のことを書いた半私小説である。父は1923年生まれ、学徒出陣ののち東北帝国大学を卒業して昭和石油に勤めた文人肌の人で、死んだあと、老人ホームから、段ボールひと箱分のAVやら「ウラ本」が出…

『勉強法』で、サイニイからレポジトリをへてpdfへ行く方法を示したのだが、それでは不十分だったことが分かった。pdfで最初に論文の表紙が出てくるのだが、そこでさらにどこかへ飛ぶべきだと思ってかたまってしまう人がいることが判明したのである。…

実は私は川端康成の書簡を一通持っている。古書店で売っていたのを通販で18万くらいで買ったのだが、三浦君子という人宛てだったからである。1947年3月10日づけだが、届いて中身を見てがっかりした。当時川端は白木屋にあった鎌倉文庫に勤めていたが、三浦と…

高校一年生の時である。現代国語の授業で、生徒の一人が教科書を読み上げていて、「早速」が読めなくなった。教師は「そうそう」だと指示した。幾人かの生徒が、はあ? という疑念のつぶやきを発した。私もその一人である。教師は慌てて、辞書でも引いたのか…