板坂元の『日本語横丁』を見ていたら、『三四郎』から、「三四郎は背の高い男である」として、美禰子を見下ろしたというのと、広田先生は身長が五尺六寸あるが、三四郎は五尺四寸五分しかない、とあるのを比べて、それでは背が高いとは言えないだろう、と書いてあるのだが、五尺六寸は168センチ、四寸五分は164.5である。当時としては「背が高い」で間違いではない。漱石は159、谷崎潤一郎は156である。樋口一葉なんか143だ。マーガレット・ミッチェルはアメリカ女としては小柄で、150、有吉佐和子は162あって大女扱いだった。美禰子も150くらいだったのではないか。三四郎が見下ろしてもおかしくないのだが。
ところで板坂のこの本は連載コラムを集めたものなのだが、はじめ『文法』に連載して、これが休刊になったので『国文学解釈と鑑賞』に引っ越したとあるのだが、板坂は『解釈と鑑賞』には、それ以前から「日本語の生態」を連載していて、連載が二つになり、片方は「五十郎」の変名で行ったらしい。だがこれはサイニイでは、著者名なしで出ている。サイニイには、誌名と年次を記して著者名なしで検索する方法はない。これは改善するか、「五十郎」のような変名も入れておいてほしいところだ。