2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

わが心の強くて自殺せぬに非ず

「わが心のよくて殺さぬには非ず」と親鸞が言ったのは、私見では別に深遠なことを言ったのではなくて、素質のない人間には殺人はできないということに過ぎない。もちろん戦争とか異常な状況は別として、日常的なあれこれから人を殺す人というのは、元来そう…

嶋中雄作宛谷崎書簡

千葉俊二先生が増補した『谷崎先生の書簡・増補版』読了。あわせて「谷崎詳細年譜」は修正した。谷崎と松子の「密通」について私への異論もあるが、これは改めて活字にしたい。ただ『谷崎伝』における明らかなチョンボが分かった。敗戦後すぐ谷崎は、『細雪…

カリスマ中井久夫

小倉千加子が『週刊朝日』に丸山ワクチンのことなど書いているから、一瞬小島千加子のような似た名前の医者かと思った。まあ小倉は医学博士なのだが…。で、丸山ワクチンはもう効果のない薬とされているけれど、中井久夫が、そうでもないことを書いているとい…

カド番大関が強いわけ

琴欧洲が初優勝。カド番での優勝である。知らない人のために解説すると、大関は二場所連続で負け越すと関脇へ落ちる。だから負け越した次の場所を「カド番」という。角番と書き、囲碁将棋から来た言葉のようだ。なお横綱は、下へ落ちるということはない。だ…

白い巨塔続き

続けてDVDで『白い巨塔』を観ている。大河内教授という硬骨漢が突然登場するのだが、70歳くらいに見えて、それまで悪玉教授だった石坂浩二や伊武雅刀より年上に見える。しかし石坂の東教授の定年退官後の人事なのだから、大河内は東より年下のはずで、な…

しばらく、ヨコタ村上がいることに抗議して退会していた比較文学会に戻り、昨日学会誌『比較文学』が届いた。中に、巽孝之の英文著作の、ヨコタ村上による書評が載っていたが、その末尾を見て私は「ここまで・・・」と思った。「評者は夢みたい。西田幾多郎…

教えてください

この世に行きとし生ける者の〜すべてに命が〜、じゃなくて、『リチャード三世は悪人か』のアマゾンのレビューで「青」という人が、初歩的な間違いが多いと書いておられた。poetがpoerになっている誤植とか、フォリオとクォートが逆になっているとかは気づい…

宣伝

ここでは「何々に何々を書きました〜」みたいな宣伝はしないことにしているのだが、これは宣伝しないと多分誰も気づかないので、『実話漫画ナックルズ』(明日あたり出るのかな?)で私の「禁煙ファシズムと戦う」が漫画化されて載っています。いやープロの…

一件落着

文藝家協会書記局長・桐原良光が謝罪してきた。私は、謝る人間には寛大なので、これまでの桐原への悪口は削除した。山本有三の「海彦山彦」が、原典『古事記』の善悪を逆転させ、謝れば許す、と言う海彦に対し、頑なに謝ろうとせず、自分で釣り針を作って返…

おどおどモード

今日は久しぶりに「おどおどモード」になった。きっかけは、駒場の書庫で、電動式のところで職員の女性が作業をしていて、私の見たい雑誌がその近くにあったので、一時どいてもらって開けて入って出てきて職員さんが入ったあと、メモを置き忘れたことに気づ…

勤労感謝の日

いや実に時期はずれなのだが、私が大学院生だった頃まで、国民の祝日には、朝方NHK総合テレビで映画を放送していた。そして、勤労感謝の日−−といっても新嘗祭の日なのだが・・・には、「労働者映画」が放送されていたのだ。今井正の「米」とか、家城巳代治の「…

剣か刀か

坪内祐三が『文藝春秋』六月号で、映画「靖国」について書いている。映画会社からコメントを求められて、放置しておいたらファックスが来て、「日本人でもここまで深く靖国を考えた人はいません」とあり、坪内は、私は『靖国』という本を書いているのだが、…

ドウテイさん?

なんか地震があったが、阪神のを経験した人間からすると、まあだまだ。 ところで読んでいなかった『夏への扉』(ハインライン)を読んでいたら「ドウテイさん」というのが出てきた。これは「ドハティさん」だと思う。綴りはDoughty。阪大にいた頃、新しい外…

死の恐怖

「死の恐怖」を語る人は多い。宮崎哲弥氏は少年時代、眠ったらそのまま死んでしまうのではないかという恐怖から一週間眠れず、病院に担ぎ込まれたという。ただ宮崎氏は、『中論』を読んでその恐怖を乗り越えたかのように語るが、理屈で越えられるものかどう…

0.5人

電車の座席は一般的に七人がけである。しかし、子供がいると、どうしても6.5人が座っている感じになる。まあその場合は仕方がないが、1.5人分くらいある奴には、電車賃を1.5倍払って座ってほしいと思う。 まあ私立であろうと国立であろうと、准教授…

ライターNの「皆さん」

『週刊朝日』の書評欄は、本紙の文藝時評に移った斎藤美奈子に代わって荒川洋治が再登場したが、いちばん長く連載を続けているのが、鬱陶しいライターNである。今回は、小沢昭一のストリップ本。一条さゆりの公判記録が載っているそうだが、小沢昭一って加…

分かりやすい話

「これから出る本」の五月下期号に黒田龍之助が随筆を書いていた。「ボクには早い『カラマーゾフ』」という題で、たぶん明大理工学部時代の教え子の青年が、『カラマーゾフの兄弟』を読んで(ただし亀さま訳にあらず)「ボクにはまだ早いかな」と言ってきた…

無題

『国文学解釈と鑑賞』の五月号が「源氏物語」特集だったので買ったら、青短教授の小林正明の文章が二つも載っていた。この小林なる者、詩的なつもりでもあろうか、おどろおどろしい文章で左翼的なアジテーションをする、完全に文学研究をプロパガンダと心得…

田中貴子の「氏」の基準

『一冊の本』に連載している田中貴子の文章を読んでいると、やたらと人名に「氏」がついている。「笹川種郎氏」「芳賀幸四郎氏」「原勝郎氏」「サイデンステッカー氏」などである。いずれも物故者である。しかし「小林秀雄」「唐木順三」は呼び捨てである。…