無題

『国文学解釈と鑑賞』の五月号が「源氏物語」特集だったので買ったら、青短教授の小林正明の文章が二つも載っていた。この小林なる者、詩的なつもりでもあろうか、おどろおどろしい文章で左翼的なアジテーションをする、完全に文学研究をプロパガンダと心得ている困った奴である。しかも今回は、河添房江先生の言葉を引用して批判しながら、それが誰のものか書いていない。こういうやり方は卑怯千万である。しかも小林は、天皇制に反対しているわけではないと言う。ではいったい君は何がしたいのだ小林よ。もうまるで二十年くらい前の党派的左翼の悪文そのもので、こんな奴に二本も書かせる編集部の見識を疑う。しかも死人に口なしをいいことに盛んに三谷邦明を持ち出しているが、晩年の三谷はまるっきりボケていた。私は物語研究会で目撃したのだが、いきなり「最近の研究では欲望というのは他者の欲望の模倣だというが」などと言う。冗談ではない。30年も前のジラールの得体の知れない一般論を持ち出して何を言っているのかと呆れ返ったものだ。わけの分からぬ左翼活動がしたいなら、文学研究など廃業するべきである。
 (小谷野敦
 mailinglistくんにはメールを送ったのに返事もよこさずに私のことに触れている。けしくりからん。
 「真に恐ろしい目」は殺人だけではないよ。まあ酒乱の渡辺秀樹とか、飲酒運転の前歴があるヨコタ村上とかを牢屋に放り込んでくれるならそれはありがたいがね。いじめっ子とかもね。そういう基準で拘禁していたら、国民の五割くらいが拘禁されてしまうわけだが、それをどうやって管理するのだろう。そういう意味で言ったら、世の中悪人の方が多いに決まっているではないか。