一件落着

 文藝家協会書記局長・桐原良光が謝罪してきた。私は、謝る人間には寛大なので、これまでの桐原への悪口は削除した。山本有三の「海彦山彦」が、原典『古事記』の善悪を逆転させ、謝れば許す、と言う海彦に対し、頑なに謝ろうとせず、自分で釣り針を作って返すと言い張る山彦を描いたのを、私はしばしば思い出す。
 大塚さんの意見をまだ聞いていないので、聞いてから返事はするが、坂上理事長が桐原に謝罪させたのだろう。理事長に感謝する。

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ウィキペディアを見ていてしばしば「このバカどもめ」と思うのは、作家の著作一覧を書くのに、文庫版の刊行年を書いている奴が多いことだ。見つけると直しているが、「新潮社、2001」などとあっても、それが新潮文庫だったりして、元本について書いておかねば書誌的意味がないだろうに、もちろん文庫オリジナルならそれでいいのだが、実にもってこの・・・そういう作家を読む連中の頭の程度が知れたりもする。
 (小谷野敦