「子供屋」と「旅役者」

 近世の男色売春については、花咲一男の『江戸のかげま茶屋』が詳しいが、神田由築の「江戸の子供屋」(佐賀朝・吉田伸之編『シリーズ遊廓社会1』吉川弘文館)によると、歌舞伎が野郎歌舞伎になってから、歌舞伎役者が「子供屋」というのを経営して、役者の弟子の「子供」というのに売春をさせていたということが書いてあり、芝神明前、湯島天神などに店を開いていたという。それが近世後半になると「旅役者」と呼ばれるようになり、旅役者宿、というのが男色売春の置屋になり、「料理茶屋」というのが揚屋になっていたという。

 これらは天保の改革でかなり一掃されるが、近世を通じて歌舞伎界と男色売春にはつながりが存在し続けたという。また寺と武家においても、寺小姓、武家小姓として男色者がいたので、それらには密接なつながりがあったともいう。大変面白い論文なので一読をお勧めする。

小谷野敦