モーム「聖火」講談社文芸文庫・アマゾンレビュー

これはやまゆり園事件だよ

星1つ 小谷野敦

 

探偵小説仕立ての筋に、息子の妻の不貞への母の寛大さといったあたりで面白がってしまうが、これは最終的には嘱託殺人ですらない、「生きていてもしょうがないだろう」という忖度殺人、つまりやまゆり事件の肯定にほかならない。下半身不随でも、妻と離婚しても、人は生きてやることがある、ということを言わなければならないだろう。