いくつかの問題点 星3つ - 評価者: 小谷野敦、2023/02/24
蓮實重彦がこの書物を抱擁したいと書いているので読んでみたが、フェミニストであ
るらしい東大名誉教授の女性がスタール夫人について書くことは、天皇制を容認する
人ではないかと、その一方で安保法制への反対運動への賛同は繰り返し書く人であ
ると、ああそういう人かと思ってしまう。またフランスで書かれた伝記を意識して大
言壮語的になりつつ、スタール夫人の男性関係について、はっきり書いていないとこ
ろがあり、それは決定的な失敗だろうと思った。蓮實先生がナポレオン三世について
は意地悪なように工藤はナポレオン独裁との対決を描くがブルボン王朝には好意的な
のではないか。