中尾知代「戦争トラウマ記憶のオーラルヒストリー」アマゾンレビュー(掲載拒否)

もったいないことをした

星3つ 小谷野敦

かつて小菅信子の『戦後和解論』を、和解など成立していないと批判した著者の労作で、第二次大戦でビルマ戦線あたりで日本軍の捕虜となって虐待を受けた英国兵士らへの聞き取りで、そもそも帝国主義を始めたのが英国ではないかという怒りをぐっと抑えての仕事ではある。249pの注に、小菅への批判はやはり載っていて、242pには、日本はちゃんと補償をすべきだ、そうでないからアメリカなんぞと同盟して、ロシヤや中国を仮想敵国としているのだと珍妙なことを書いていて台無しにしている。2022年7月といえばウクライナ戦争は始まっているというのに依然としてロシヤがアメリカよりまともな国だと思っているのは実におかしい。他人のトラウマより自分の狂信的な平和主義のほうを点検したらどうか。あと天皇(現上皇)としつこく出てくるが、明仁天皇と書いておけばいいので、この人は天皇主義者じゃないかと思った(小菅もそうなっているようだが)