高校のころ、私には親友が一人いた。中学から海城にいたOで、文学の話などをよくしていたが、私が好きだった大江健三郎などは読まなかった。ある時ふと私が、椎名麟三の「赤い孤独者」ってのがあるな、と特に意味もなく言ったら、彼が「あ、おれ、赤いとかそういうマルクス主義のは読まないんだ」と言ったから、ちょっとびっくりした。私も別にマルクス主義者だったわけではないが、「赤い」とあるから読まないというほどの拒否意識はまるでなかった。第一、「赤い」だからマルクス主義だという連想は私にはまるでなかった。彼はもしかして実家で、赤に近づいたりしちゃダメだぞと言われたりしていたのだろうか。