倉橋由美子「ポポイ」の顛末

先日、間宮芳生の訃報を見ていたら「ポポイ」という作品名があったので、あっと思って図書館から倉橋由美子の『ポポイ』(新潮文庫)を借りてきたら、まさにそれであった。解説をNHKのラジオディレクター・斎明寺以玖子が書いており、それによると、1987年、伊勢原市に住む倉橋に斎明寺がラジオドラマを委嘱し、ギリシャ語からとったこの作品が書かれ、間宮の音楽をつけて、島本須美岸田今日子らの配役で7月に放送され(倉橋は小説を書き、ラジオドラマとして脚色されたらしい)、8月の『海燕』に原作は一挙掲載され、福武書店より刊行、しかし福武文庫ではなく、91年4月に新潮文庫に入った。筋は、21世紀、元首相が邸宅で襲われてしかし襲った少年はその場で割腹し、介錯されたがその首は最新科学で生きており、舞という若い女がその「生首」を飼うことになるというもので、『倉橋由美子の怪奇掌編』というなぜかベストセラーになった本の中の「アポロンの首」というのを下敷きにしているとか。

 サロメみたいな話だが私は倉橋のこういう趣味を別に面白いとは思わない。

小谷野敦

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