「読みやすくなった」の真相

吉本隆明の『共同幻想論』が「改訂新版」として「読みやすくなった」との触れこみで角川文庫から出たのは、1982年1月、私が大学へ入る直前だった。実際に読んだのは数年後だが、どこが「改訂」されて、どう読みやすくなったかまでは調べなかった。呉智英さんは『読書家の新技術』で、本当に読みやすくなったかどうかまでは保証しない、と書いていた。
 あとになって百川敬仁先生に訊いたら、あれは句読点をいじるとか、漢字をひらがなにしたとかその程度でしょう、と言われた。
 で、今回、現物で確認してみたら、「序」で「体系的な考えをおしすすめて」が「かんがえ」になっており、「禁制論」では「フロイトは見出していたのである」が、「フロイトは」をとって「見つけ出していったのである」になっているという具合で、多分あとのほうもこの程度の小さい手直しだけなのだろうと思った。