谷沢永一の大学紀要論

日本近代文学者で評論家の谷沢永一関西大学教授の「アホばか間抜け 大学紀要」は『諸君!』の1980年6月号に載った(「あぶくだま遊戯」所収)。大学紀要がいかにくだらない論文を載せているかという痛罵の論でその後しばらく話題になった。1988年の中沢騒動の時も西部邁が論及していた。谷沢は躁うつ病だったから、これは躁状態で書いたものだ。

しかし谷沢は、左翼嫌いの東大嫌いだったから、実例としてあげたのは、無名学者の真にくだらない紀要論文ではなく、東大教養学部紀要の、藤井貞和とか桑野(百川)敬仁の「現代思想」風「源氏物語」論批判をしたため、「現代思想」批判にはなっても、大学紀要批判としては的を外したものになってしまった。平川祐弘も左翼嫌いではあったが東大びいきだから、谷沢のこれをあまり説得力はないと書いていた。