私は英文科で最初の年エドワード・オルビーで卒論を書いた。もちろん『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』を読んで激しく感動したせいだが、どうもそれ以外のオルビーの作品はいまいちだったし、ちょっと相談した英作文の沼沢先生もそう言っていた。当時は「ダビュークから来た婦人」までが翻訳も出ていた。
その後、オルビーの新作「三本の手を持つ男」を、生協で注文したのだが手に入らなかったりして、私の関心はオルビーから離れて行った。早川書房も、オルビー全集を、「ダビューク」からあとは出さなくなった。
94年の新作「Three Tall Women」を、2000年に「幸せの背くらべ」の題で黒柳徹子が出てやっているのを観に行ったが、あまり感心しなかった。
私が演劇から遠ざかったのは、ロビーの禁煙が広まっていったからである。『猿之助三代』では、面倒くさいので、演劇に飽きたとだけ書いたが、あのやたらな禁煙がなかったら、まだ劇場通いは続いていたかもしれない。
さて、それが先日、オルビーの『山羊』というのを文学座アトリエでやると知り、ふと行く気になった。どうやら2002年の作で、04年に青年団が上演していたようだが、観ていなかったし読んでもおらず、白紙の状態で行った。
信濃町のアトリエへ行くのは初めてだが、ここの慶応病院には、前に通院していた。創価学会があるところなので、妻には「もう大きな力に頼るしかないので、創価学会に入会してくる」と言って出掛けた。しかしこんなに暑くてみんなよく生きてられると思うほどだ。
演出は米国のものらしい。主人公は50歳の天文学者だというが、60くらいに見えた。妻があり、18歳の息子がいるが、息子はゲイである。この夫が、山羊と恋をして、その山羊がシルヴィアといい、セックスもしたというので騒動になる。
途中、同じせりふが繰り返されたりして、冗長に思ったから、休憩があったらそれで逃げ出していたかもしれないが、なかったので最後まで観た。で、ショックを受けた。そう来たか。
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『一冊の本』の鹿島茂が面白いところへ来て、小林秀雄が「アシルと亀の子」を書いたがこれはアキレウスで、フランス語読みするとアシルだがなんでアシルにしたのか、と問題にしたのは渡辺一夫だけだったという話。これはもう次回は吉本隆明の異様な『マチウ書試論』へ行くのだろうなと期待感あふれる。普通には「マタイ伝」と呼ばれるのをなぜか「マチウ書」とフランス語で書いたうえ、イエスをジェジュと書くとか、実に小林を凌駕するわけの分からなさなのである。