旺文社文庫のことなど

 旺文社文庫というのは、なくなってしまったが、なかなか面白い文庫だった。「内田百間の本を狂ったように出した」と言われたが、潰れて、その後福武文庫が同じことをして潰れて、今はちくま文庫…大丈夫かしら。
 もっとも私は百間ファンではない。ただ解説が充実していたし、何か独特の雰囲気があった。その解説目録には、中学生以上、高校生以上、成人以上という区分けがしてあったのだが、ぱらぱら見ても「中」「高」のどちらかで、「成人以上」なんてものがあるのかと、高校時代友人と探したら、一冊だけあったから驚いた。有馬頼義の『貴三郎一代』である。恐らく「やくざ小説」だからだろうが、少し笑えた。

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阿川弘之吉行淳之介はともに東大だ(吉行は中退)。二人で対談をして、戦後の混乱期だから無試験で誰でも入れた、などと言うのだが、この二人が言ってもあまり説得力がない。

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Amazon.com を私の名前で検索すると『評論家入門』の題名が副題まで含めて英訳されて出てきたから、海賊版でも出たのかと思ったよ。しかしあれ「清貧でもいいから」とあるからといって、私が清貧だとか、清貧を目指すとかそういうことは言っていないのだがね。中野好夫は「清富」がいい、と書いていた。

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 哲学科っておかしな奴が昔も今も多いようだ。私の頃は、院試に二度落ちて創価学会に入ったのがいた。その後、学会の講演会をするというのでもう一人の友人に連れられて行ったら、日本が悲惨な戦争を起こしたのは正しい信仰を持たなかったからだ、とか言っていた。
 あと一人は、私の知人女性にストーカーめいたことをして嫌がられていたが、今では聖心女子大准教授だから驚く。