将軍は歌舞伎など観ない

 「篤姫」で将軍が歌舞伎役者の真似をしていたが、むろんシナリオ作家の作り事ながら、歌舞伎というのは町人の観るもので、将軍が歌舞伎を観たことがあるはずがない。能なら幕府の式楽だから何度も観ているだろうが。

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桜庭一樹直木賞受賞作『私の男』で、ヒロインの結婚相手である男が、彼女の養父である腐野淳悟に初めて会う場面で、惇悟はタバコを吸っている。夜である。「丸の内界隈は禁煙地域なのに、と僕はあきれた。知らないのだろうか。それともそんな、守るべき社会のルールなんて気にしないのだろうか」とあって、私は一瞬、桜庭というのは禁煙ファシストなのかと思ったが、この語り手は、凡庸で頭の足りない男として描かれているから、そうではあるまいが、それにしても、夜の千代田区辺でタバコを吸うくらいであきれる男なんて、いるのだろうか。いるとしたらかなりの単細胞だが、桜庭が、この男をそういう男として描いたのなら、まあ仕方がない。私など千代田区だろうがどこだろうが吸っている。なお知らぬ者のために言っておくが、あれでカネを取られるというのは、「罰金」ではない。「課金」となっているし、払わなくても警察に逮捕されたりはしない。そんなことをしたら憲法違反になるからだ。カネを払う連中こそ、ものを知らないのである。ちなみに最近、国会図書館へ行くために国会議事堂の前を通る時も、私は吸っている。

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先日、駒場へ私宛に、地方某医大の某氏より書籍らしいものが届いていると連絡があった。調べてみると、某医大附属病院呼吸器科の医師だが、当人に著書はない。まさか爆弾ではないだろうが、禁煙派医師からデータでも送ってきたか、いや、それとも…と思いつつ受け取りに行ったら、第二の推定どおりの手紙と、統計に関する本が入っていた。手紙の内容は、私のブログを楽しみに読んでいる、確かに禁煙ファシズムだと思うが、立場上患者には禁煙を勧めている、とても実名を出して言う勇気はない、とかいう内容。たはは、と思ってしまった。そりゃあ、こういう末端の医師なんか、とても禁煙ファシズムに抵抗できる状況じゃないわな。既にこのこと自体がファシズムを証明しているよ。なお送ってくれた本は翻訳『統計学を拓いた異才たち』。