19世紀後半から20世紀のフランスのロマンスつまり通俗小説に関する本。
- 作者: Diana Holmes
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
- 発売日: 2007/02/08
- メディア: ハードカバー
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オルコットといえば『リトル・ウィミン』(若草物語)で知られる作家だが、その作中でジョーは、金のために「センセーション・ノヴェル」を書いて稼ぐが、のちそれを恥じてやめる。だがオルコット自身が、センセーション・ノヴェルを書いていたというのだ。センセーション・ノヴェルとは、1850年代からおおむね女性作家たちによって書かれた通俗的・扇情的な小説で、1850年にスーザン・ウォーナーの『広い、広い世界』が米国初のミリオンセラーとなっている。
- 作者: Susan Warner
- 出版社/メーカー: BiblioBazaar
- 発売日: 2007/06/18
- メディア: ペーパーバック
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さらに売れたというのが、マライア・カミンズの『点灯夫』である。
- 作者: Maria S. Cummins
- 出版社/メーカー: University of Michigan Library
- 発売日: 1854/01/01
- メディア: ペーパーバック
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あと日本でも圧倒的に有名なのが、ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』で、これが爆発的に売れたことが、南北戦争の一因となった、政治を動かした小説である。
さてオルコットは、エマソンを師と仰いでいたが、A・M・バーナードの変名で「Behind a Mask」を書いている。これが1975年に、オルコットの作として発掘され、刊行された。
Behind a Mask: Or, a Woman's Power
- 作者: Louisa May Alcott
- 出版社/メーカー: Createspace Independent Pub
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: ペーパーバック
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つまりこれが「センセーション・ノヴェル」の本道であって、リチャードソンの『パミラ』を露悪的にしたものと言えるだろう。20年前に佐伯順子さんは、『明治文学全集』に入っている大塚楠緒子の小説「空薫」を論じていたが、それはこういう英米の小説を読んでネタにしたに違いないのである。
もちろん、そういう小説がどっさりあったことは、アメリカ文学の専門家は知っているのだが、文学の半可通は知らずにいる。で、明治期家庭小説は、こういうのときちんと比較するということを、比較文学者がやらなければいけなかったのである。