梅原猛には息子と娘がいる。娘ひまりはヴァイオリニストで、梅原ひまりを名のっているが、夫の横内敏人は建築家で、京都造形芸術大学副学長を務め、いま教授。息子は梅原賢一郎という哲学者で、京都造形芸大教授。妻は福井謙一の娘の美也子。梅原は京都造形芸大学長だったから、まあ七光り一家だが、その美也子夫人が、2007年にがんで死んでいたことを知った。遺稿などを集めた『不在の空』を入手した。
美也子さんは1954年生まれ、神戸女学院大学卒、三人の男の子があり、2007年10月13日、53歳で死んでいる。私はこの本でその日付が、母が死ぬ一か月半前であることを知り、はっとした。
母は、自分が68歳で死んでゆくことを、理不尽だと思っていた。私は美也子さんの死は、報道されなかったから知らなかった(ただし人脈から言えば伝わる可能性はあったが)。もし知っていたら、こんな立派な家の人が若くして死んでいるということを母に伝えることができ、それはいくらかの慰めとなっただろう、と思ったのである。
私がそう思ったことに、深い意味はないのだが。