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もてない男訳 浮雲

もてない男訳 浮雲

訂正:
57p「新内」「清元」はいずれも浄瑠璃の一派なので表現がおかしい。「浄瑠璃」とあるのは「義太夫」とあるべきところ。
215p「村井絃斎」→「弦斎」 くーっ痛恨。黒岩さんごめんなさい。

 ヨコタ村上孝之は、『浮雲』で修士論文を書いたのだが、『浮雲』を訳していると、本田昇というのがまるっきり村上そっくりな人間なのである。恐らく村上は、なんでこんな色男が、悪役のように言われるのだ、と思い、そこから研究を初めて、『色男の研究』に至ったのであろう。実に研究の筋道がよく分かるのである。

http://www.youtube.com/watch?v=LbCN1vUZQ5Q&feature=player_embedded

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あんにょん由美香』という映画を観たのだが、想像以上に不出来だった。韓国で作られたポルノ映画に林由美香が出演したという、そこを追って行くのだが、韓国人俳優が日本語でしゃべるとか、シナリオにあった最後のシーンが撮影されなかったとか、要するにその場で深い意味もなくやったであろうことを、何やら深い意味があるかのように追っていくのが、なんとももどかしい。
 いったいに、林由美香が死んだことが、かつての映画『由美香』とあわせて、その伝説化を呼び起こしたのであろうが、顔も美人とはいえないし、特に何かがすごかった女優というわけでもなく、それはただ作り手の思い入れでしかない。『由美香』を撮った平野氏が、これはリスキーだとか、ごまかすんじゃないぞ、などと言っているのだが、何がリスキーで何がごまかすんじゃない、なのか、最後まで分からない。急死の真相が明らかになるのかといえばそうでもない。
 もう一つ気になったのが、韓国でその映画を撮った人に取材した際に、韓国では、こういう映画に出たことがばれると俳優はまずいことになるとか、自分もまたこういう映画に関わったことが分かるとまずい、と言っているところで、「日本と韓国の性文化のギャップを感じた」と字幕が出ることで、いや日本だってさして違わないだろう。ピンク映画出身の俳優や監督というのはいるが、AV出身の俳優や監督というのはほとんどいない。一般俳優がピンク映画に出演すれば、それではっきりと業界内での地位は落ちる。『愛のコリーダ』に出た藤竜也も、その後しばらく干されていたし、松田英子に至っては消えてしまった。墨田ユキは消え、飯島愛は死んだ。
 私にはこれは、AVというものを、カウンターカルチャーと位置づけようとする、いわばアングラ文化人のような人たちが持ち上げた映画に思えるのだが、その実態は、ここで描かれるようなものばかりではないはずなのである。その辺をきちんと言う人がいないものかという気はする。
http://eigageijutsu.com/article/122584121.html
 これはいいなあ。切通理作あたりに向けて言うんだが、『ウルトラセブン』とかで、怪獣があまり(ないし全然)出ない回があって、そういうのが「名作」とされていて、シナリオ作家、たとえば市川森一に、よくあんな人間ドラマが書けましたね、と言うと、単に怪獣を出す予算がなかったから、と言うのである。その辺は、いずれちゃんと書くつもり。『怪獣ドラマ入門』とかって。また例によって入門じゃないわけだが。『あんにょん由美香』も、実際は仕事だから韓国のポルノに出ただけ(林由美香には、黒人三人とプレイするのもあった)のを、過剰に意味づけする、というのがいけない。というか、素朴に疑問なのだが、あのビデオってそんなに笑えるかね。AVたくさん観ていたら、いくらでも変なストーリーのものなんかあるんだけど。