田中英道『日本と西洋の対話』

 田中英道『日本と西洋の対話‐一文化史家のたたかい』(講談社出版サービスセンター)というのを図書館で借りだしてぱらぱらと読んだ。この美術史学者・東北大名誉教授にして、「あたらしい歴史教科書をつくる会」の会長だった人はノーマークだったが、学界の内幕話とか、私が知らなかった大泉公一との論争のこととか書いてあって、そこそこ面白い。しかしこの人の人脈が、どうもよく分からない。1942年生なので、平川先生とかと一世代違うせいかもしれない。一般論として日本文化がどうとかいうあたりは、平川先生と言うことが似ているのだが。
 中に、自著がさる大手新聞社の賞の候補になったので、その日は電話の前で待つように言われたが電話はかかってこず、その後学会の後でさる東大教授が、自分が反対したから受賞しなかったのだと笑いながら言った、その後その東大教授は その書とそっくりの題名の本を出した、とある。
 変数が多すぎて分かりにくいが、恐らく毎日出版文化賞で、樺山紘一で、『光は東方より』(田中、1986)と『中世からの光』(樺山、1989)のことだろう。 
 これは大学の新聞に連載したものを自費出版したものらしいが、そのせいか誤植が多い。「フェミニスム」と書くのはフランス語の人だからだろうが、「ポスト・コロニアニスム」とか「ボス・コロ」とかある。酒田市の阿部次郎文化賞を受賞しているのだが、阿部の著書『徳川時代の芸術と社会』を「芸術と文化」と書いている。