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「危ないですから」に違和感があるのは「形容詞+です」の問題ではなくて、「ですから」の使い方ではあるまいか。
「あなたは美しいですから、好きです」
「犬は人間よりずっと寿命が短いですから、かわいがってあげないと」
いずれも違和感がある。日本語を学んだ韓国人が、よくこの「ですから」をおかしな風に使う。
「あなたももう係長なんですから、しっかりして下さいな」
これだとおかしくない。だがこれは形容詞ではない。
「寿命が短いんですから…」
とすると、ぐっと違和感が減る。というか、これで正しい。「ん」が入っただけである。かといって「危ないんですから」とやっても余計変になるだけだ。
「危険」を使わず「危ない」を使って自然にするには、どうするか。
「危ないですので」にしたらどうか。かなり自然になるのではないか。
「私は貧しいですから、かけそばにします」
やっぱりおかしい。
こういうのを、単なる個人的差異とか口調だとか思うのは間違いで、チョムスキー系の言語学が、素人が読むとげんなりするような細かな規則を割り出しているのは、まさにこれをやっているのであって、これなど既に論文があるかもしれないし、なかったら郡司隆男先生あたりに頼んだら書いてくれるかもしれない。そうだ、いっそ『「危ないですから」はなぜおかしいのか』と題して、チョムスキー系言語学を紹介する新書を書いたらいいのだ。
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そうそう、その昔、アンドレ・ブルトンの『ナジャ』というのがよく人の口の端に昇ったっけ。
なんだか少女の名前らしくて、ブルトンってのがまたウルトラマンの怪獣みたいで、わくわくして、その頃『ナージャと竜王』ってシナのアニメがテレビで放送されて、まあそんなに面白くなかったんだけど、古本屋めぐりをしていて『アンドレ・ブルトン集成』の『ナジャ』が入っているのを見つけて、わーいと思って買ってきて、わくわくしながら読んで…え? 何これ? どこが面白いの?
…ってなことがあったっけな。
(小谷野敦)