2016-01-01から1年間の記事一覧

凍雲篩雪

「杉田久女伝説」の謎 田辺聖子の『花衣ぬぐやまつわる… わが愛の杉田久女』は、一九八七年に刊行されて、女流文学賞を受賞した。私が大学院に入った年で、母が購入して読んでいたから、実家にあるが、今日まで読む機会がなかった。先ごろふと読んでみて、杉…

隅野滋子のこと

昭和初年、谷崎潤一郎は、大阪女子専門学校英文科の女子学生たちに、翻訳や大阪弁の手伝いをさせていた。その筆頭が隅野滋子で、滋子は大正15年(1926)暮れ、大阪女専在学中に、新聞で谷崎と猫の写真を見て、猫が見たいと手紙を出し、同期の武市遊亀子とと…

久しぶりに新刊です

弁慶役者 七代目幸四郎作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 青土社発売日: 2016/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る訂正 75p「軌っておいて」→「斬っておいて」 126p「杵屋伊十郎」→「芳村伊十郎」 「岸沢文字兵衛」→「常磐津文字兵衛」 13…

高橋昌一郎の理性の限界

高橋昌一郎は『週刊新潮』に連載していた「反オカルト論」で、『あの日』が出たあと盛んに小保方晴子を攻撃していたのを、私が批判したことがある。 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20160523 それが本になったのだが、なぜか新潮社ではなく光文社新書で…

純文学書下ろし特別作品

新潮社のシリーズの一覧(刊行年、文庫化年)充たされた生活 石川達三 1961(白) 1980 浮き灯台 庄野潤三 1961 砂の女 安部公房 1962(白) 1981 恋の泉 中村真一郎 1962 花祭 安岡章太郎 1962(緑・青) 1984 遠い海の声 菊村到 1963 個人的な体験 大江健…

乗代雄介の「本物の読書家」(『群像』九月)は、川端康成の「片腕」を代作したという大叔父を、茨城県高萩の老人ホームへ入れるために、読書家の若者が常磐線で連れて行く途中、車内で奇妙な男に遭遇するという話でまあまあ面白かったが、フォークナーなど…

尾崎一雄の『あの日この日』という自伝がある。その講談社文庫版は全四冊だが、その第一巻の最後のほうに、昭和五年八月、尾崎が住む下曽我に、曽我十郎・五郎の記念碑が建って、松本幸四郎らの歌舞伎俳優や森律子らの女優が来たということが書いてある。 尾…

凍雲篩雪

門田泰明は、バイオレンス小説の作家として知られるが、若い頃は純文学を目ざし、芥川賞作家の多田裕計に師事していた。門田の出身大学は不明だが、多田の示唆によって、生計のたつ通俗小説に転向したという。『黒豹作家のフットワーク』(光文社文庫)は、…

川端康成詳細年譜作者: 小谷野敦,深澤晴美出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2016/08/31メディア: 大型本この商品を含むブログを見る訂正 421p 勅使河原蒼風の没年が?になっているが1979年

行方昭夫先生からいただいたモームの『お菓子とビール』を読んでいたら、どうも分からないところがあった。まず第四章、ドリッフィールドという、ハーディがモデルだという作家の伝記を書いてほしいと未亡人から言われた語り手のアシェンデンは「数年前に短…

司馬遼太郎著作年譜

司馬遼太郎(1923-96) 1955年9月 福田定一「名言随筆サラリーマン」六月社 321956年5月「ペルシアの幻術師」 講談倶楽部 33歳1957年5月「戈壁の匈奴」 近代説話 34歳 12月「兜率天の巡礼」 〃1958年1月「伊賀源と色仙人」 小説倶楽部 35歳 4月-59年2月…

「座談会“義理人情”罷り通るー大衆小説功罪論」(『労働文化』1954年10月)は、青野季吉、中島健蔵、十返肇の鼎談で、今では珍しい大衆文学、特に時代小説批判である。早乙女貢だったか、これの中島健蔵にやたら怒っていたのだが、読んでみるとそうひどいこ…

『久米正雄伝』の『白蘭の花』のところに、蘭は満洲の花とありますが、満洲の国花は高粱で、蘭は皇帝の紋章だそうです。しかし国花だと思われていたようです。 なお久米を山岡荘八が代作した「折鶴」については、『大衆文学研究』1990年第94号に清原康正の「…

「国民の総意」とは何か

凍雲篩雪 「天皇……の地位は、主権の存する国民の総意に基く」と日本国憲法にあるのは、かねてからの謎である。「総意」は、『日本国語大辞典』で調べると、「すべての人の意思。全体に共通している意見」とあり、もちろん日本国憲法発布の時点でも天皇制に反…

理由はない

石原千秋が、『さようなら、オレンジ』について、好きであることに理由はない、と言ったのだが、これはよく考えたら歌謡曲によく出るフレーズだった。

新書一覧

〇岩波新書 1938- 2000冊以上角川新書 1948-70 229冊哲学新書 雄山閣 1948-49 15冊アテネ新書 弘文堂 1949-71 126冊学燈新書 1949-57 10冊法蔵新書 1949-57 7冊みすず新書 1950 10冊入門新書 川津書店 1950-60 66冊学習研究新書 山海堂 1951-53 26冊三笠新…

文庫一覧

1927 岩波文庫 1929 改造文庫(-1944) 1937 博文館文庫(-1944) 1947 新潮文庫 1948 アテネ文庫(弘文堂、-1949) 1949 角川文庫 1951 創元文庫(-1954) 三笠文庫(-1956) 現代教養文庫(社会思想研究会出版部→社会思想社、-2002) 学燈文庫(-1989) 19…

東大博士論文一覧(3)

●2004 △川島堅二(1958‐、恵泉女学園大教授)『F.シュライアマハーにおける弁証法的思考の形成』本の風景社、2005 〇千葉敏之(1967-、東京外大教授)複製された神聖王権 国家形成期ポーランドとオットー朝ドイツ △国武貞克(奈良文化財研究所)石材分…

東大博士論文一覧(駒場文系1)

1990 ●杉田英明(1957‐、東大名誉教授)『事物の声 絵画の詩 アラブペルシャ文学のなかのイスラム美術』平凡社、1993 サントリー学芸賞 1991年 〇張競(1954‐、明大教授)『近代中国と「恋愛」の発見』岩波、1995 サントリー学芸賞 〇佐伯順子(1961‐、同志…

東大博士論文一覧(1)

1990年以降、東大の人文系で博士号をとった人の一覧です。物故者、日本に残らなかった外国人は除いてあります。●は東大、早慶の教員ないしはどこかの名誉教授、○は首都圏および京阪神のまともな大学、旧帝大の教員、△はその他の大学の専任、および助教、特任…

東大文学部白書

上野千鶴子が『家父長制と資本制』で博士号をとったと思っている人がいたようだ。私も、数年前まで誤解していた。上野さんは、日本でもドイツでも博士号はとっていません(後記:2013年「ケアの社会学」で東大博士)。沼野充義先生もとっていません。ハーヴ…

駒場白書

(2023年更新版) 好評なので(?)駒場のほうもやってみました。もっとも、博士号のあるなし以上に、あまりに高齢化しているので驚きました。何しろ、70年代生まれが4人くらいしかいません。今は総合文化研究科の所属で表示されるのが普通なので、めったに見…

「新人小説月評」担当者一覧

「新人小説月評」担当者一覧 編集 1994年下期 川村湊、富岡幸一郎 1995年上期 清水良典、芳川泰久 1995年下期 スガ秀実、★三枝和子 1996年上期 菅野昭正、室井光広 1996年下期 ★松原新一、中条省平 1997年上期 渡部直己、大杉重男 1997年下期 松本道介、東浩…

丸谷才一年譜

1925年8月27日、山形県鶴岡市馬場町に、丸谷熊次郎の次男として出生。父は開業医。 1944年4月、旧制新潟高等学校文科に入学。百目鬼恭三郎と同級。 19歳 1945年3月、山形の連帯に入隊、8月敗戦を青森県で迎える。9月、新潟高校に復学。 1947年4月、東京帝国…

『群像』創作合評一覧

群像創作合評一覧 編集 『群像』の三人でやる「創作合評」は、1949年から三か月交代が定着し、74-75年と2003年になくなったが再開して今日に至っている。だいたい純文学作家と批評家が中心だが、最近では文学外の人材、ないし翻訳家なども入るようになってい…

筒井康隆作品書誌

筒井康隆(1934年- ) 1960年 25歳 8月「お助け」 宝石 1961年 26歳 1月「環状線」宇宙塵 10月「廃墟」宝石 1962年 27歳 1月「きつね」「訪問者」(ユミコちゃん)ヒッチコック・マガジン 1-6月(ショートショート)科学朝日 1963年 28歳 1月「ある罪悪感…