修士論文を本にした例

(東大比較文学
平川祐弘ルネサンスの詩』内田老鶴圃 1961 のち講談社学術文庫
脇明子『幻想の論理」講談社現代新書 1974
四方田犬彦「空想旅行の修辞学」(七月堂)1996(あとになって)
西成彦『個体化する欲望 ゴンブロヴィッチの導入』朝日出版社、1980
福田真人結核という文化―病の比較文化史』 (中公新書)2001(あとになって)
岸田俊子エリス俊子)「萩原朔太郎」(沖積舎)1986
佐藤宗子「『家なき子』の旅」(平凡社 1987
佐伯順子『遊女の文化史』中公新書、1987
加藤百合『大正の夢の設計家』朝日選書、1990
劉香織『断髪』朝日選書、1990
小谷野敦八犬伝綺想』福武書店、1990
松居竜五南方熊楠一切智の夢』朝日選書、1991
崔官『文録慶長の役講談社選書メチエ、1994
寺尾紗穂「評伝川島芳子」(文春新書)2008
(付記)村上陽一郎『ペスト大流行』(岩波新書 1983)が修士論文だという都市伝説があって、ここにも記しておいたのだが、村上の修論は「西欧科学思想史に於ける生物進化学説の位置とその明治期の日本に於ける受容−近代の解明への一試論」で、『ペスト大流行』は、1965-66年の『比較文化研究』に載せた「中世と近代の谷間,黒死病--ペスト史序説」がもとであった。

(その他)
浅井香織「音楽の<現代>が始まったとき 第二帝政下の音楽家たち」中公新書 1989(芸大)
李孝徳「表象空間の近代」新曜社、1994(東大)
小熊英二単一民族神話の起源 <日本人>の自画像の系譜』新曜社 1995(慶大)
赤川学「性への自由/性からの自由 ポルノグラフィの歴史社会学青弓社、1996(東大)
渋谷知美「日本の童貞」文春新書、2003(東大)
金益見「ラブホテル進化論」文春新書、2008(神戸学院大
古市憲寿『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』光文社新書
荒井悠介『ギャルとギャル男の文化人類学新潮新書、2009(慶大)
開沼博『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』青土社(東大)
石橋悠人『経度の発見と大英帝国三重大学出版会、2010(一橋)
田崎英明『夢の労働 労働の夢 フランス初期社会主義の経験』青弓社

 厳密には修論とは言えないのもあるし、ほかに本を出してあとになって出したのもある。三〜五万部売れたというのは佐伯さんと古市と開沼とあとぼちぼちだろうし、それをみなにやれというのは無理な話。