「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」の思い出

私は大学時代「児童文学を読む会」にいたが、そこの一学年先輩で、現役だったから年は私と同じ、理系で、のち地方の理系大学の教授になっている糸魚川(仮名)という人が、ある時、P・K・ディックの「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」を読んでやたら興奮して「LSD小説の傑作だ!」と言っていたのだが、聞いている私たちはややポカンとしつつ、内心で、

(この人はLSDをやっているのだろうか・・・?)

 と思ったりしていた。

 こんなサークルにいるから文学好きかというと、前にも書いたが、宮沢賢治と詩とSFと「うる星やつら」が好きだが、夏目漱石とかそういう普通のリアリズム文学は唾棄しているという人だった。のち、世間には結構そういう非リアリズムのものだけ好む人がいるのを知ることになるが、当時は不思議で、頭をひねったものである。