杉本大一郎と蓮實重彦

川上弘美の父が、東大名誉教授の植物学者・山田晃弘だと知って調べていたら、杉本大一郎と共著を出していた。杉本は1937年生まれの駒場の宇宙物理学者で、中沢新一の任用に科学者の立場から毅然として反対したことで知られる。

 西部邁が外から東大攻撃をしていた五月ころ、駒場でこの問題についてのシンポジウムが開かれ、中沢擁護派の蓮實重彦村上陽一郎と、反対派の杉本とあと竹内とかいう自然科学者が相対した。蓮實は、今や時代は「ポストモダン」であるということを縷々説明するのだが、その際フロアの学生が質問に立って、「なんで大学の先生の言うことってのはこう難しいんだろう」と言ったのに、蓮實が「それはあなたがバカだからです」と答えたのは前に書いたことがある。

 そのあと壇上での議論がまた続いたが、杉本は蓮實に対してかなり攻撃的で、「ちゃんと説明してもらわないとバカには分からない」と挑発し、蓮實もちょっとまずいと思ったのか「私もそちら(自然科学)へ行けばバカになるわけです。そのことは認めていただかないと、ここで闘争をしなければならなくなります」と答えた。

 今では私はポモはインチキだと知っているから、杉本が正しいと思うが、ただ態度はかなり尊大ではあった。