のらくろの「アイヌのかめ」

私は小学校の二年から三年の当時、講談社から復刻されていたのらくろ漫画を夢中で読んでいた。当時ちょっと流行して、おかげでアニメにもなったくらいだ。

 のらくろ二等兵から出世して曹長まで行き、そこから士官学校へ行って少尉に任官するのだが、当時私は軍人というのはこういう風に出世するものだと思っていて、士官はエリートで最初から士官学校へ行くものだとは知らなかった。

 その『のらくろ少尉』に「アイヌのかめ」という逸話がある。猛犬連隊内で士官になって自室を持ったのらくろが、部屋に備えつけの考古学の本を読んで、このあたりにアイヌが住んでいたはずで遺跡を掘り起こそうと思いつき、それらしいところを掘ると大きなカメ(甕)が出てきたので、アイヌのかめだと思い込み、ブル連隊長に寄贈する。だがモール中隊長がやってきて、あれはそのあたりにあった人家の便所の落としガメだと教える。私は子供のころ「落としがめ」の意味が分からず母に訊いた記憶がある。漫画の技術として、ブルが腰を抜かしたところで終わっていて、のらくろが叱られるところまで描かないのはうまいなあと思った。

 ところで、ということは猛犬連隊は北海道にある設定だったのだろうか。なお「のらくろ」は最後は豚の国との戦争になるが、この漫画には人間も登場するから、設定があいまいである。