「アナと雪の女王」と「ナウシカ」

 ディズニーアニメ「アナと雪の女王」が、日本語に変換される過程で意味が変わったということを千田有紀さんが書いているのを読んでいて,

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ある種の「ついていけなさ」を感じた。私はこのアニメは吹き替えで観たが、アナがかわいいなと思っただけで、よく意味が分からなかった。妻から、これはエルザの苦悩が中心なのだと聞かされて、へえーと驚いたくらいだった。まったくその点では感情移入はできなかった。

 ところで「風の谷のナウシカ」が歌舞伎化された時、改めて原作を読み直して、これはナウシカクシャナが主人公だというので、自分は全然クシャナに関心を持ってこなかった、つまり映画版「ナウシカ」以上のものは原作を読みつつ理解していなかったことを知ったが、そう思って読んでも、全然クシャナの立場には感情移入も共感もできなかったが、これはそれと似ている。

 すべての君主制に反対である共和主義者の私が、君主後継者の苦悩に共感したりできないということなのか、といえばそうでもあろうし、では男ならどうか、といえば、男の君主といえば説話論的には悪役か、水戸黄門的なデウス・エクス・マーキナに決まっているから、共感する回路が私の中にもとからまったくない、ということになるだろう。

小谷野敦