パオロ・マッツァリーノ「思考の憑きもの」アマゾンレビュー(掲載拒否)

あまりシャープな人ではない

星1つ 小谷野敦

この人は昔からいるが、イタリア人を装った日本人らしい。匿名で他人を批判したりするのは卑怯である。初めて読んでみたが、夫婦別姓について、反対論を批判する文章があった。私は夫婦別姓は、やりたければやってもいいが議論が十分になされておらず、不健全だと感じている。そもそも野田聖子が言い出したのは、野田の家名を残したかったからだというのが分かっているが、子供の姓が野田にならなければ夫婦別姓にしても意味はないので、ジャーナリストはどういうつもりだったのか野田に聞いてほしい。ほかにも、一人娘で家名を残したいという動機で夫婦別姓などと言っている者がいたが、やはり子供の姓についての議論がなされていない。著者は、前近代日本は夫婦別姓だと言ってお市の方の例をあげているが、お市浅井長政に嫁しても浅井長政の姓が変わらなければ子供は浅井氏となる。もし男が婿入りしたら男の姓が変わるから、前近代でも夫婦同姓になる。もしそういう動機で夫婦別姓にしたら、子供ができた時に夫婦間でもめごとが起こるだろうと私は言っているのだが、マッツァリーノはこの話にも全然乗ってはこない。大した論客ではないなと思った。

宮崎哲弥八木秀次の『夫婦別姓大論破!』を貶しつけているが、前近代の日本は夫婦別姓というのはここに書いてあり、それは女の腹を借り物とし、家には入れないという思想からで、別にリベラリズム夫婦別姓だったわけではないと書いてあるんだがそういうことは無視する。

キャロライン・ケネディが結婚しても旧姓のままでも、子供の姓は夫の姓である。要するにそういうことだが、そういうこともマッツァリーノは知らんふりをするから、ふーんそういう人なんだ、と思う。