私が松浦理英子の『奇貨』にアマゾンで一点をつけたので、「モデルにされた恨みだ」と思ったり、松浦ファンで怒っている人もいるかもしれないのだが、私は松浦の小説に描かれる人間関係というのが、レズとかそういうことを離れて、かなり自分が生きている世界とは異質のものに思えるのである。松浦が青学だからかもしれない。『親指p』の時も、本筋へ入る前に、大学生が普通に、誰もかれも恋人がいてセックスをしていて、それが普通だという設定に衝撃を受けたものだし、今回のような「ルームシェア」などというのは、私は考えたこともない世界で、しかもその相手が異性でレズとくると、ありえないだろうと思ってしまって、いやもちろん小説だからありえないことを書いてもいいのだが、グレゴール・ザムザが蟲になるのは理解できても、こっちは理解できなくて、脳がそこから先へついていかないのである。
盗聴というのも、私は大して興味がなくて、それくらいなら家族構成を興信所に頼んで調べてもらうほうに興味があるのである。谷崎の『鍵』もついでに書いておいたのだが、日記なんぞ覗き見して何が面白いかと思うし、自分が日記をつける習慣がないから、現実感がないし、日記って本当のことを書くものではないだろうと思うのである。