私はWHOや厚生労働省が出しているという「受動喫煙」の害に関するデータというのを信用していない。これは、別に私が信じたくないからではなくて、私だって「害は確かだが現在の規制は過剰だ」と言ってしまえばよほど楽だと思うくらいだ。だが、学者としての良心がそれを許さない。
 なぜか。
 さる地方の医師が送ってくれた『統計学を拓いた異才たち』(サルツブルグ、日本経済新聞社)に「喫煙はがんの原因か」という章がある。その中に、バートランド・ラッセル記号論理学を整える過程で「原因と結果」というものだけがどうしても記号論理学で表現することができなかった、とある。「原因と結果というものは存在しない。それは通俗的な妄想であり、純粋理性の攻撃に耐えられないあいまいな概念なのである。それは矛盾したアイディアにおいて相互に一致しないものを含んでおり、科学的言説においては、ほとんど、もしくはまったく価値を持っていないのである」
 さて、藤本君は、「疫学の教科書」というものをよく持ち出す。しかし、教科書に本当のことが書いてあるとは、私は思っていないのだ。「低学歴層は寿命が低い」とか、そういうことは教科書は書かないものである。むろん、書いてある本もある。
 次に、「受動喫煙」の害について、研究成果がすべて公表されているのではなく、害があるとするものばかりが公表されている可能性が高い。これは現に、千葉大での研究に対して渡辺文学が圧力をかけるということもあったし、別に疫学でなくて人文学の分野でも、たった一人の権力者の説を覆すのに何十年もかかるとか、それどころか、私は「ポストモダン」というのは建築にしか適用できない概念だと信じているが、世界各国で「ポストモダン」を社会や歴史や文学に適用する論文はゴマンと書かれ、崇められている。
 「受動喫煙」に関しては、私はエンストロームの論文を掲げたが、やはり疑問があるのは、配偶者が喫煙しているかどうかで区分していることで、さて、配偶者というのはそんなにいつも一緒にいるものだろうか? 
 また、最近は新聞でよく、日本はたばこ対策の後進国だなどと宣伝されているが、それならなぜ日本の平均寿命はこんなに高く、たばこ対策の先進国である米国を凌駕しているのか。それは、米国が階級社会だからだ、と言うだろう。では要するに、階級社会であることのほうがたばこより健康に害を及ぼすという、『寿命を決める社会のオキテ』でウィルキンソンが言っていることを裏書するものではないか?
 たとえば藤本君が、こんなに研究があるんだぞ、と言う。私は、調査の方法によって、害が大きいとするものや、小さいとするものがあって、大きいとするものばかりが助成金を得ていたり、小さいとするものを出したりしたら医学界で白眼視されて出世できないとか、そういうことがあると思う。実際私はそう言う証言も得ているわけだ。となると、藤本君は、そのような事実がないということを証明できるだろうか。
 「受動喫煙に関する疫学」はインチキであると私は言った。それは以上の理由による。同じように「建築以外のポストモダン論はみなインチキである」「精神分析を用いた論文はみなインチキである」「ユングはオカルトである」「土居健郎の甘え理論は意味不明である」といったことを私は言っていて、別にそれで世間に誤解を招いているとは思っていない。なぜなら新聞をはじめとするマスコミはせっせと「受動喫煙」がたいへんな害毒であると宣伝しているからで、藤本君が何をしゃかりきになっているのか、不思議でならないのだよ。
 藤本君は私が「地球は丸くない」と言っているも同然だと、興味深いことを言っているが、もちろんガリレオ・ガリレイは、地動説をローマ教会から撤回させられたわけだ。現代のWHOはそういうことはしない、とでも思っているのかな? 実にしばしば、そういう勘違いをしている人というのは多いようだね。つまり、科学を捻じ曲げるようなことが行われたのは昔のことだ、あるいは北朝鮮のような独裁国家だ、現代の先進国ではそんなことはないと、そんな風に思っているのではないかな? 私は全然そうは思わないのだよ。特に学者をやっているとね、私だって、単に一人の先輩を批判するだけで、どれほどどきどきし、覚悟が要ったことか。いわんや自然科学は金も手間もかかるわけで、こんな凄まじい同調圧力を掛けられたら、「受動喫煙」の害がない、などという研究ができるはずがない。できなければ出てこない。そしてそのような圧力は現に存在する。

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全然「責任転嫁」じゃないと思います。藤本君が言っているのは、総理大臣が「それについては防衛大臣に説明してもらいます」と言ったら責任転嫁、というのと同じです。「お前が国政の最高責任者であり自衛隊に指示を出すんだからお前が答えろ」とか言っているのと同じです。
 それから、そんな三段論法、私は用いていません。捏造はやめてください。そこにジャムロジクの論文があがっていますが、これも平山論文を使っています。あとハンス・アイゼンクの『たばこ・ストレス・喫煙のどれが健康を害するか』という本に、喫煙の害だけを取り出すのがいかに難しいかは書いてあります。
 まあ、私をイラつかせて罵倒語を書かせて裁判を有利に運ぼうとしているのは分かりますが…。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090220-00000093-jij-soci
この猪野和住ってのは昨年9月に交通巡査から運転免許の提示を求められて殴って公務執行妨害で逮捕されているが、まだクビになっていなかったのか。腐ってるな東大駒場