藝術院会員続々死去

 これで第二部は四人欠員だあ。まあ、第二部の会員なんてほとんど死亡適齢期だから、こういうこともあるわな。しかし『アポロンの島』ってどこが名作なのか全然分からないんだよね。それ以外に、何があったのか、という気もするし。顔がハンサムだったとか。『試みの岸』とか『マグレブ、誘惑として』とか、タイトルもかっこいいし。地中海を旅して美しい言葉を書くハンサム作家。往年の亀井勝一郎みたいなものか。
 井上章一さんが絶賛していた大澤寿人の「神風協奏曲」入手したけど、別に・・・バルトークの亜流みたいで、傑作というほどのものか?
 佐藤優が受ける理由の一つに、日本のインテリと亜インテリの、国際情勢に関するコンプレックスがある。ドイツやイタリアの象徴大統領制も知らないくらい基礎的な知識もなく、歴史についても恐ろしく無知なくせに、知っていなきゃいけないというコンプレックス。佐藤はその辺をうまく、知らなかっただろうという態度ではなくて、私は極秘情報を知っているんですという感じで伝えるから。でも今や活字とネットの情報をきちんと押さえておけばスパイなんか必要ないくらいに分かるのだよね。自分で勉強する能力のないやつが佐藤を読む。
 (小谷野敦