続けて長堂英吉「黄色軍艦」を読む。1998年『新潮』に一挙掲載された250枚くらいの中編か。平野啓一郎の「日蝕」と同じ年だから編集長は前田速夫だろう。
明治20年代の沖縄が舞台。明治の琉球処分で、独立して薩摩と清国に両属していた琉球は日本領になり、沖縄県となって、旧王の尚家は華族になった。ここで清国に期待しつつ独立を目ざす沖縄独立運動を描いたもので、日清戦争を契機に清国が日本を打ち破ることを期待し、清国から「黄色軍艦(ちいるぐんかん)」がやってくると期待している人々が描かれている。もちろん日清戦争は日本の連戦連勝で、黄色軍艦も来なかったという話。
どの程度史実に基づいているのか分からないが、研究論文も今のところ見当たらない。現在未来社の『未来』に、石垣島出身の八重洋一郎の「稗史『黄色軍艦家【キルグンカンチャー】』余録」というのが連載されているから、これが本になったら分かるのだろうか。