「最後の文人石川淳の世界」(集英社新書)のざっとした感想

「最後の文人石川淳の世界」(集英社新書)を読んでいるが大概何を言っているか分からない。冒頭で田中優子が、戦後石川は、天皇制を廃して大統領制にする千載一遇のチャンスだったと言ったが今ではほとんどの人が考えないと言っているが田中は考えないのか。私は考えている。だいたい私の最初の天皇小説「天皇と煙草」を「天皇」の部分を「あの方」に変えてくれとか、天皇制を批判したいなら評論でやれとか言ったのは「すばる」ではないか。

浅田彰や蓮實先生が石川淳を批判したとして帆苅基生という人がかわすみたいな反批判をしているのだが、そもそも石川淳は馬琴をバカにしていたはずで、「狂風記」を八犬伝になぞらえて褒めているあんたらがおかしい。

馬琴が遊戯的な近世文学では異端であったとは露伴が言ったことで、坪内逍遥人情本は評価して異端的な馬琴を批判した、むしろ江戸的な、娼婦を妻にするような人だったんじゃないか。現に石川淳好きの田中優子鈴木貞美も、馬琴が好きだと感じたことはいっぺんもない。