2017-01-01から1年間の記事一覧

凍雲篩雪

死者にプライバシー権はない 先日、別に深い関心があるわけではないが、一九一〇年代生まれの、著書も五、六冊はある学者で、さる大学の名誉教授だった人について調べたら、大学のウェブサイトに「故人」とあったが、没年が分からないので、大学にメールで問…

ロデリック・ハドソン

1988年に私は比較文学の大学院の修士二年生だったが、その年から、行方昭夫先生が大学院の授業を担当することになった。比較文学比較文化課程では、芳賀、平川、小堀、川本といった固定した人たちと、駒場の教員がローテーションで三年ずつくらい担当するの…

小谷野賞

2016年度小谷野賞 佐藤貴彦『STAP細胞 事件の真相』パレード 発掘特別賞 中原清一郎「生命の一閃」『新潮』1986年1月号STAP細胞 事件の真相 (Parade books)作者: 佐藤貴彦出版社/メーカー: パレード発売日: 2016/12/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この…

三木卓さんがいじめについて

『かまくら春秋』に三木卓さんがいじめについて書いていたが、まったくその通りだと思う。偽善的な社会学者の言とはまったく違う。

恋愛、12世紀の発明

1993年10月26日、私は本郷仏文科の助教授だった月村辰雄先生に電話していた。のち「<男の恋>の文学史」になった博士論文に関するおたずねのためで、先ごろ若くして死去した平野隆文さんが前もって話しておいてくれたのだ。当時私は帝京短大で非常勤で英語…

労働貴族

蟻二郎(本姓・三宅)という英文学者が、平井正穂氏を糾弾するという文章を『新批評』という同人誌に書いたのはその筋ではよく知られている。その文章の中で、大学院生の就職についての改善を蟻がいうと、平井だったか教授が、そんな面倒なことになったら大…

夜よゆるやかに歩め

「政治少年死す」も入っている『大江健三郎全小説』が出るそうだが、どういうわけか、『青年の汚名』が入っていない。あと大江最大の封印作『夜よゆるやかに歩め』は当然のように入っていない。 これは1959年、デビューしたての大江が『婦人公論』に一年間連…

比較文学会を提訴した元理事

比較文学会の会報に、一会員が学会を名誉毀損で訴えたという記事があって驚いた。一年ほど前に、学会の倫理規定に反したというので一会員を懲戒したと書いてあり、それも何のことだか分らなかったのだが、それを書いたことによる名誉毀損だという。しかし名…

凍雲篩雪

小保方晴子と「魔女狩り」 私は最近の、「SEALDs」とか「SMAP」とか、アルファベットで書かなければいけないという風潮が気持ち悪い。女性雑誌名で、アルファベットの大文字と小文字が混在しているのなどは、校閲が直すからいいとして、一般人が書く際にまで…

英文科同期の現在

宮本なほ子→アルヴィなほ子 東大総合文化研究科教授(英ロマン派) 矢田部良一 同(英語学) 中村浩一郎 帝京大学講師(英語学) 高岸冬詩 首都大学東京教授(英国詩) 吉田信夫 跡見学園大学准教授(アメリカ文化) 加藤雄二 東京外国語大学教授(アメリカ…

ここまでバカとは思わなかった

https://wan.or.jp/article/show/7237 先般来問題になっている城西大学前理事長・水田宗子の公金費消事件だが、こんな声明を出したバカどもがいる。中には私の知っている人も多く、特に信頼していた人というのはいないのだが、ここまでバカとは思わなかった…

司馬遼太郎の『胡蝶の夢』のうしろのほうに、松本良順が浅草のえた頭弾左衛門を診察するところがある。そこで、被差別民の「研究者としては、古くは幸田成友博士、高橋梵仙氏、現在では石井良助教授、荒井貢太郎教授、高柳金芳氏がおられる」(新潮文庫第四…

小説のしくみ: 近代文学の「語り」と物語分析作者: 菅原克也出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2017/04/29メディア: 単行本この商品を含むブログを見る

http://12letters.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-3cbb.html 北大の真崎睦子さんは、飲酒の危険性を説き続けているが、それが読売の記事になって「お酒の飲み方、北大で講義」と見出しをつけられた、という話である。マスコミってのはこういうことをす…

右翼爺さん

渡部昇一の『腐敗の時代』(1979)を読んだら、徳富蘇峰のことが書いてあった。渡部が子供の頃、蘇峰の『日本国民読本』(1939)という「白い本」が家にあって、右翼爺さんだと思っていたという。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1919162 これはおかし…

凍雲篩雪

豊臣秀次と和泉式部 呉座勇一の『応仁の乱』(中公新書)が、堅実な歴史書にしては異例のベストセラーになっているという。かつて中公新書では、神坂次郎の『元禄御畳奉行の日記』(一九八四)が売れたし、磯田道史『武士の家計簿』(新潮新書、二〇〇三)も…

http://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=252 http://www.unikato.at/ ソーニャ・カトー、1972年ヴィーン生まれ、ではあるんだが顔が違う。

古い日記

2005年11月の このところ碌な目にあわない。週刊誌へのコメントは二つ没になるし、鼎談は変だったし。今朝は古書店から送ってきた本の宛名が「小野寺敦」。こないだの毎日新聞の記者三角真理が送ってきた原稿は、こんな。 東京・杉並の小さな喫茶店にママチ…

ある恨み

吉行淳之介とか亀井俊介とかの自伝的文章を読んでいて、中学校(今の高校)の先生が、のちにけっこう偉い大学教授になったりしている。私の場合そういうことはない。それが何か「恨み」の念となる。

村上春樹と病んだ女

読者(35歳女):村上春樹を読むのは病んだ女だというのを読みましたが、私も詠み始めたころは病んでいましたが読んで治りました。 村上春樹:人は誰しもある程度病んでいます。二足歩行して意識をもっていればそうなります。僕の読者(それも女性だけが)病…

田中英光「姫むかしよもぎ」

田中英光に「姫むかしよもぎ」という中編がある。国会図書館にも近代文学館にもあるが、芳賀書店の全集には入っていない。西村賢太の『田中英光私研究 第五輯』に載っている。 これは1947年に赤坂書店から出ているが、この「私研究」には、西村が赤坂書店の…

人の童貞を笑うな

『文學界』五月号の、村上春樹『騎士団長殺し』(私は読んでない)を論じた山崎ナオコーラの文章に、こんなパラグラフがある。 (ところで、村上作品を嫌う人の中に、「セックスシーンが多過ぎる」「主人公がこんなにモテるわけがない。リアリティがない」と…

宮崎大学珍事件

宮崎大学の准教授だった人が、都留文科大学の教授に転任してから、宮崎大から懲戒解雇され、それが報道されたため都留文科大でも懲戒解雇され、裁判をした結果教授が勝訴したのだが都留文科大では授業を持たせてもらえないという事件が起きている。 http://g…

三愛新書

「三愛新書」という謎の新書がある。判型は新書に違いないのだが、200pあるかないかで、題名は「人間と文化 教養講演集」で、それが1からずっと続いている。それ以外のものもあるようだが、非売品らしいから書店で見ることはなく、まれに古書店で、絶対売れ…

http://ya-na-ka.sakura.ne.jp/koharaKatsumori.htm これは間違い。小原勝守は明治32(1899)生まれで、小原勝五郎の孫。 http://ameblo.jp/derbaumkuchen/entry-12057575854.html こちらが正しい。しかしこの墓地サイトは、間違いの指摘は受け付けないと開…

なぜ地図を

私が埼玉県へ越してきたのは小学校三年の時で、担任は女の若い先生だったのだが、ほどなく家庭訪問があった。「小谷野君、うちは遠い?」と訊かれて、遠い、と答えた。当日、先生を案内して家まで行くと、「なんだー、全然遠くないじゃない」と言われた。子…

川本三郎の『林芙美子の昭和』(新書館)に、「山本健吉は『昭和の女流文学』(実業之日本社、昭和三十四年)のなかで、ヴァージニア・ウルフの「女が小説を書くためには、女が『自分だけの部屋』を持つようにならなければならない」という言葉を紹介してい…

新刊です

芥川賞の偏差値作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 二見書房発売日: 2017/02/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 訂正:52、53p「ゴーゴリ」→「ゴーリキー」 77p 「モデルはなく」→「モデルは小谷正一で」 100p「かがみがはら」→「かかみがは…

牛山ホテル

岸田國士の「牛山ホテル」という戯曲を読んだが、実に読みにくく難儀した。というのは、半分くらいが泥深い熊本弁のセリフだからで、まるでフランス語で読んでいるようで、かつ何が起きているのか分からなかった。筋はだいたいこんなところである。ハヤカワ…