ずるいぞ笛吹童子

 1977年4月から78年3月、NHKの人形劇は「笛吹童子」だった。それまでの辻村ジュサブローの人形からすると幼稚なひとみ座の人形で、そう面白くはなかったのだが、途中から出てくる胡蝶尼の人形が美しく、その頃ちょっと好きだった(人形愛か)。
 その胡蝶尼の声は真理ヨシコで、歌手だからよく歌を歌っていたが、この歌がまた良かった。しかし真理は、次の「プリンプリン物語」では、悪人ランカーの秘書で、密かにランカーに思いを寄せ、プリンプリンに嫉妬して暗殺さえ企てた。このヘドロには、シドロとモドロという間抜けな二人組の部下がいるのだが、これはタイムボカンシリーズのパクリだろう。しかしこれはさらに「不思議の海のナディア」でも続き、ケバいおばさんと間抜けな男の部下二人というパターンは日本の伝統文化と化す。
 さて、その「笛吹童子」には、キリシタンの男が登場して、「ただ信ぜよや、信ずる者は誰もみな救われん」という歌を歌っていたのだが、「笛吹童子」は応仁の乱の後の時代だから1480年ころで、キリスト教が入ってきているはずはなく、だからこれは、時代を1560年ころまで引き下げていたわけだが、だとするといろいろ無理があった。
 そのためか、ある日、本編の後で、三枚目キャラの人形が出てきて、日本へのキリスト教伝来の解説をしたのだが、それがどういうわけか、「1546年」と言い、「以後よろしく」と覚え方まで付け加えたのである。すぐに視聴者から問い合わせがあったのだろう、二日後くらいに訂正があって、川久保潔の声で、その三枚目キャラが「勝手に」そういうことを言った、と言って人形にぺこぺこお辞儀させながら、正しくは1549年だと訂正し、「以後よろしく、いや、以後よく、覚えてください」としめくくったのである。
 私は中三だったが、「ずるい」と思った。たまたま、ナレーターの雷門ケン坊ではなくて三枚目キャラが言ったのをいいことに、スタッフが間違えたものを、そのキャラのせいにしたのである。小学生対象の番組とみて、そうしたのだろうが、小学生だって、変だと思うだろう。果たしてその後、あれはずるいぞという抗議があったかどうかは、知らない。
(付記:あとで考えたら、キリシタン以下のエピソードは、次の年の「紅孔雀」だったかもしれない。