須山静夫追悼文

http://plaza.rakuten.co.jp/professor306/diary/
 もう24回になるが、須山静夫の追悼文である。7月に亡くなったのだが、新聞でも報道されなかったし知らずにいた。86歳くらいになっていたはずだ。
 須山静夫といっても、世間では知られていないだろうが、かろうじてフラナリー・オコナー『賢い血』の訳者といえばとおるらしい。しかし、『翻訳家列伝101』の編著者で、文学賞マニア、私小説派の私としては重要な人である。1971年、新潮新人賞を46歳で受賞している。その後も小説は書き続けたが、むろん中央文壇ではなかった。妻、息子を相次いで亡くした閲歴を描いた最後の小説『墨染めに咲け』は、買って読んだが、残念ながら心乱れていたか、日記などが挿入されてかなり読みにくく、小説の態をなしてはいなかった。それでも私は、書評をしようかと思ったほどだった。
 なお「O先生」とあるのは慶大の大橋吉之輔で、大橋健三郎・東大名誉教授のほうは、92歳でなお健在である。私より一年下のこの筆者、まあ尾崎俊介氏なのだが、まあ私の世代でこれほど濃密な師匠との関係があるだろうかと驚かれる。須山が非常勤を辞めたので本務校の明大へ移ろうと考えるあたり、尋常ではない。『英語青年』に訃報が出ていなかったのは、把握できなかったのだろう。

墨染めに咲け

墨染めに咲け