かわいそうな円窓

1970年代に「笑点」のレギュラーをしていた三遊亭円窓という落語家がいて、円窓というのは師匠の圓生の前名なのだが、そのせいかいつも「六代目円窓です」と名乗っていた。そんなに落語はうまくなかったが、ある時期から名を残そうと思ったのか、埋もれた落語の掘り起こしをして「落語五〇〇」というのをやり始めた。

 2022年に81歳で死去したが、名前を継ぐ人はまだいない。確か小三治の『どこからお話しましょうか』という自伝で、若い頃円窓と一緒にやっていたが当時円窓は勢いがあって小三治をバカにしていたが、今では円窓のほうが影が薄いとバカにしていたので、おや小三治も人の悪口を言うのかと思った。

 藤浦敦の『三遊亭円朝の遺言』というのを読んでいたら、この人も円窓を二回バカにしていた。そのくせこの藤浦という人は、入船亭扇橋とか、六代目小さんを継いだ三語楼とか、当時文楽を継いだ小益とかは擁護したり褒めたりしていて、何だか円窓がかわいそうになった。まあ、私も円窓を特に評価しているわけではないのだが。