藤浦敦「三遊亭円朝の遺言」(1996)レビュー

藤浦敦という人は、円朝の友人の藤浦周吉というのが三遊派宗家というのになり、その孫の三代目で、円朝の名を継がせる権限を持っているという。それでこんなタイトルになっている。談志、小さん、小朝がお気に入りでこの三人との対談が入っているが、ほとんどは1980年から94年まで時事通信の配信で書いた寄席の随筆で、題名と中身が食い違っているので不満の声が多いようだ。驚くのは六代目圓生をかなり悪く言っていて、戦後の滑稽噺は良かったが円朝の怪談噺はダメだと言いつつ、小朝の累ヶ淵なんかは絶賛している。志ん生文楽に対してもあまり点が高くない。1930年生まれで2023年まで生きていて、「若旦那」なんて言われていて特権的な地位にいて、志ん朝は褒めているんだがそれほど熱意を感じない。寄席で自分が聴いたものについてしか言わないから、上方落語については何も言っていない。一人だけやたらバカにされているのが円窓で、入船亭なんかは普通にヨイショされている。あと九代目の文楽に甘い。概して普通に甘い人だが、小三治もそれほど褒められてない気がする。六代目小さんになった三語楼にも甘いのは小さんびいきだからか。しかし花緑も大した落語家にはならなかった。

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