スタンリー・ホートンの「村の祭」

 スタンリー・ホートン(Stanley Houghton、1881-1913)は、英国の劇作家である。

Stanley Houghton - Wikipedia

  その代表作「ヒンドル・ウェイク」は、1910年の作である。

Hindle Wakes (play) - Wikipedia

  題名は「ヒンドル村のお通夜」とでもいうのか、これは坪内士行が「村の祭」と題して訳出し、大正四年十月1日から十日間、無名会が有楽座で帝劇女優の一部と合併して上演した。同時上演は松居松葉「太閤と淀君」池田大伍「共益貯金」である。

 「村の祭」は、ランカシャーの雛菊堤水工場の持ち主のナサニエル・ゼフコートの息子アランが、地方の有力者で準男爵のティモシー・ファーラーの娘ビアトリスと婚約して一年近くなるが、アランは工場の労働者クリストファー・ホーソーンの娘ファニーと数日遊びに出て関係を結んでしまい、怒った父はビアトリスとの婚約を破棄してファニーと結婚しろ、でなければ財産は分けないという。アランはしぶしぶ承諾し、ビアトリスにもそういうが、ファニー自身は、アランと結婚する気などないと言い、困ったアランはまたビアトリスに頼みに行くという貞操劇で、翻訳が単行本として出た時には「村の祭にみる貞操問題」という議論の付録がついたらしい。私は『近代劇大系 第8巻 英吉利編』で読んで、単行本は国会図書館にもないので、付録のほうは見ていない。