しばしば見過ごされてきたのは、こうした種の変化を、ダーウィンは「進化(evolution)と呼ばず、「変化を伴う由来(descent with modification)(略)と呼んでいたことである。これを「進化」という言葉に置き換えたのは、ハーバート・スペンサーらしい。
evolution はもともと個体発生という意味で使われていたのを転用したもので、そこには予定された運命がしだいに展開されていくというニュアンスが含まれ、したがって進歩主義的かつ前成説的な色合いの濃い言葉である。ダーウィンがスペンサーと決定的に異なるのは、進化が必ずしも進歩であると考えてはいなかった点である。
−−垂水雄二『進化論の何が問題か』